MY ROOM -spring 葛藤--4
「‥ね、ねぇ?楓?」
小さな声で言った。
「‥どうしたんだよ?」
心配になって覗き込んでみた。
驚いた。彼女は声を殺して泣いていたんだ‥。
「‥楓‥。どうしたんだよ?学校でなんかあったの?」
彼女はやっと口を開いた。
「‥嬉しいの。」
声がかすれてよく聞こえなかった。
「えっ?」
「嬉しいの。‥鷹文が来てくれて。‥私ね、鷹文がホントに私のこと好きなのか分からなかったの。」
「そんな、好きに決まってるだろ。」
そうだ、当たり前だ。。心の中で何回好きって思っただろうか。授業中や寝る前に、何回楓の顔が浮かんだだろうか。目を閉じて耳をすませば、どこかで楓がオレを呼んでいる気がする。そう、あのソプラノで透き通るような声で‥。
「ちがう!」
「‥何が違うの?」
「だって‥。私、好きって言ってもらえない‥。告白した時からずっとよ!それに鷹文まじめだし、勉強のことしか考えてないんじゃない?」
大間違いだ。楓のことしか考えてない。
でもこんなにも彼女を追い詰めていたなんて‥
好きの一言も言ってやれない自分に腹が立った。
「でもね。鷹文は授業抜け出して、ここに来てくれた。私を選んでくれたンだよね?そうだよねっ?」
返事の代わりに彼女の腰に手をまわして、強く抱きしめた。
「‥ゴメン。ゴメンな楓。」
女の子の前では泣かないと決めていたが、我慢できなかった。楓には自分の弱さを見せられると思った。
「鷹文‥」
「‥楓、好きだよ。大好きだ。こんな時に言うなんて卑怯かもしれないけど‥でも‥楓が思っている以上に、オレは楓のことが好きだよ。誰にも盗られたくない‥。」
勇気を出して言ってみた。そうだ。オレは勇気がなかったんだ。自分でもプライドが高いって分かってるよ。奥手なオレに楓は嫌気がさしていたのかもしれない。
でも今は違う‥
はっきり言えるよ。楓のことが好きだってね。
恋愛と勉強、必ず両立させてみる。それなら高村だって文句ないはずだ。
「ありがとぉ。鷹文。ねぇ、これから何処行く?学校には戻らないでしょ?」
「ん?んーそうだなぁ。どこ行きたい?」
しばらく彼女は考えていた。
「じゃ、鷹文の家!」
予想外の答えだった。
「え?ウチ?家に来て何すんの?普通映画観に行こうとか、買物行こうとかじゃんよ。」
彼女は首を横に振って言った。
「ううん。鷹文の部屋行きたい。あの部屋で鷹文と一緒に勉強するんだ。ねっ!いいでしょ!?」
あきれた。でも、楓とはうまくやっていける。絶対に‥。一ヶ月前もそうだった。オレの部屋で二人は始まった。