やっぱすっきゃねん!VH-2
試合を終え、球場を後にした青葉中野球部々員達は、学校に到着するとグランドに整列した。
永井と葛城は、試合中に感じた良かった点、悪かった点を具体的に説明して皆に伝えた。
ここで、永井の指示により部員達の行動が別けられた。試合に出た選手はこのまま休養とし、それ以外の部員──控えや1、2年生─は、次の試合や来年のことを考えて夕方まで練習を行うと。
だが、練習が始まると、レギュラーの中で指示に従う者は誰ひとりとしていなかった。
特に試合に貢献出来なかったレギュラー達は、次回のために必死の練習を続けた。
──こいつら…。
ひたむきに白球を追う上級生。その姿を見た下級生達も、負けじとばかりに熱の入った練習を繰り返す。
凄まじい練習光景を面あたりにした永井は確信を持った。
次も必ず勝てると──。
ワンプレイ毎にハツラツとした声がグランドに響き、俊敏な動きをみせる部員達。
そんな中、佳代は心痛な面持ちで皆に付いて練習していた。
いつもより少し早い時刻。練習を終えた部員達は学校を後にする。
次回の試合は9日後、夏休みに入って2日目だ。それまでは、厳しい練習が待っている。
「…じゃあ、お先」
直也に達也、それに淳の前を佳代の自転車が走り去る。
「大丈夫かな。あいつ…」
つい、直也の口から漏れた言葉。それを聞いた達也も淳も一様に困ったような顔だ。
「何とも言えないな。気持ちの問題だからな…」
そう答えたのは達也だ。
「気持ちの問題か?」
「ああ。今日の試合で受けたボール、ありゃ練習の時と比べりゃ棒球だ。あれじゃ打たれる。最初から気持ちが負けていた…」
「確かに、交替の時の落ち込み様は普通じゃなかったな」
2人の会話に淳も割って入る。
3人とも心配なのだ。共に練習をしてきた仲間が、あれほどの落ち込みを見せるとは思ってもみなかったからだ。
それに、練習で佳代が見せた球を見て、勝ち進むには必ず彼女の力が必要だと思っている。
それが、初登板でこれ以上ないというほど叩かれた。その光景から彼らは思い出していた。
昨年、地区大会の準々決勝。
誰もが勝利を確信した時にエラーを冒した後、佳代は野球を辞めるとまで云いだした事を。