精神科医佐伯幸介出会いサイト物語
〜カルテNo1の1 藤堂倫 27歳 独身 新聞記者〜-2
部屋に入ると、黒木は妙に明るく振舞った。
きっと、自分の心のあせりを隠すためだったのだと倫は思った。
倫は落ち着いていた。きっといつかはこの日が来るのだからと覚悟はできていた。
黒木はぎこちなく倫にシャワーを勧める。
倫は、「お先にどうぞ」と言おうと思ったが、勧められるままにシャワーを使うことにした。
そんな倫の態度にへらへら笑う黒木を軽く軽蔑しながらシャワールームに消えた。
バスタブに湯をはりながら、シャワーを浴びる。
スラリとした長身に張りのあるバストとヒップがついている。
ガラス張りのシャワールームだから、きっと黒木はこちらを見ているのだろう。
倫はかまうことなく、のびのびと身体を流した。
そして、長い脚をバスタブのふちに乗せ、ゆっくりと湯につかりながら大きくため息をついた。
黒木がイライラとしている様子が目に浮かぶようで少し楽しかった。
バスタブから出て、ゆっくりとお湯をふき取った。
そして、大きめのバスタオルを身体に巻き、シャワールームを出る。
「お先にありがとう」そう言うと、黒木は飛び掛ってきた。
黒木はもどかしそうにバスタオルを剥ぎ取りベッドに押し倒すと、豊かなバストに顔を埋めてきた。
倫は、顔を横に向けてされるままにした。
がむしゃらな愛撫にも、倫が微かに欲情を覚えだした頃、黒木は倫の身体から離れ、床に座ってしまった。
「どうしたの?」倫が尋ねる。
「だめだ、立たない・・・・」黒木が小さく呟いた。
倫にとっては始めての経験ではなかった。
今まで、倫も人並みには男性経験を持っていた。
今日の黒木と同じような男性も幾人かいた。
その誰もが口を揃えて倫を罵った。
「お前が悪いのだ・・・。」と。
さすがに黒木はそうは言わなかった。
「大丈夫よ、私がしてあげる」
倫はそう言うと、黒木のうな垂れたモノをそっと口に含み、唇で包むようにした。
黒木は自分の股間に顔を埋める倫の髪を優しく撫でている。
しばらくすると、それは少しだけ固くなりつつあった。
そこで、倫は舌を伸ばし、くびれた部分を刺激してみた。
その瞬間、口の中にタラッと暖かいものが溢れてきた。
「う、うう」黒木がうめいている。
倫の口の中にいやな匂いが広がった。
倫は、あわててそれを吐き出そうとした。しかし、黒木に悪いと思い、それを堪え、ティッシュを取ってそっと口から出した。
「ごめん」という黒木に、倫は無言で笑顔を見せる。
黒木はそれを倫の愛情だと受け取っていた。
倫にとって、男性の性を口中に受け止めることは初の体験だった。婚約者である黒木に愛情を持たなければいけないと思った結果の行動だった。
だから、黒木の思いもあながちはずれていたわけではない。
倫は、近頃自分の身体が快感を欲していることに気が付いていた。現に、中途半端に終わってしまった黒木との情事が、今にいたってまで倫を苦しめていた。黒木がラブホテルに車を乗りつけた時に僅かな抵抗も見せなかったのは期待していたからだった。
倫の纏う知性と美が、周囲の人間にはもちろん倫自身にもそういった性への欲望を否定させてしまっていた。昨夜もプスプスとくすぶった欲情の炎が、自宅に戻りシャワーを浴びる頃に襲いかかってきた。倫は、自分の股間に強い水流を当てながら右手を伸ばした。元来、教養の高い倫にとって、自慰行為は戒められるものだった。つい最近まではその行為をしたことがなかったのだが近頃は度々それをする。しかし嫌悪感を伴う自慰では倫の欲望の炎は静まらない。
そして、倫は考えた。
(私を知らない男なら、私のことをメチャクチャにしてくれるかも・・・)
(そして私もプライドを捨てて身体を投げ出すことができるかも・・・)
倫は、デスクのパソコンを立ち上げ、慣れた手つきでマウスを操作すると、液晶画面には次々と文字が流れて行った。
マウスの操作を止め、画面を見つめる。
画面にはプロフが表示されていた。