エンジェル・ダストF-4
「結論からいえば、佐倉氏が残したメモの──P─はペンタゴンだッ」
そう前置きすると、結論に繋がる数々の名前や数値を、バックデータにあげた。
「しかし、いくら同盟とはいえ、そんな事をやるのか…?」
五島の問いかけを無視する恭一。頭の中にある今までの情報と、たった今、受けた情報を組み合わせていく。
しかし、その導き出した答えがあまりにも突拍子もない内容に、自身も驚いていた。
「まだ結論には甘いな。なんとか椛島と話をして断片を繋げないと…」
「それより、さっきの賊に心当たりは無いのか?」
自らが得たデータを読む雰囲気とは一転、心配気な五島の顔を見た恭一は首を振った。
「車内に銃弾は残っていなかったが、おそらく、陸自のオートバイ部隊あたりだろう。M駐屯地から追ってきたんじゃないか」
「しかし、オートバイ部隊ってのは偵察隊じゃなかったか?」
「五島。それは情報不足だぜ。奴らは表面上、偵察隊となっているが、オートバイからの射撃などを実演している。命令されればやるさ」
「だとすれば大丈夫なのか?」
五島が強い不安感を口にした瞬間、恭一の頭に電流が走った。
──しまったッ!
慌ててポケットから携帯を取り出すと、通話ボタンを押した。蛇口からの吐出音だけバスルームに響き続ける。
「ダメだッ!」
携帯を切る恭一。その表情は焦りへと変わった。
通話ボタンを押すのを何度も繰り返す。だが、最後まで電話は繋がらなかった。
携帯を取り出して30分後。恭一は厳しい顔を浮かべて電話を諦めた。
「…やられた」
「どうしたんだ?やられたって…」
恭一の言葉が、何を示すのか五島は分からなかった。
「…柴田と椛島だ。電話をしたが、どちらも繋がらない。おそらく…」
──これまで、3度もオレを襲った連中だ。奴らが真実を隠すため、柴田や椛島を消したんだ。
「これで繋がりが切れた…やられた…」
ここまで、散乱する情報の断片を拾い集めてきた。もう少しですべてが繋がる。それをあと1歩のところで阻まれた。
苦々しげに悔しがる恭一。そんな姿に五島は意を唱える。
「勝負はまだ終わってないだろう」
「確かにそうだ。いずれは真実を暴くことは出来る。
しかし、そこに至るまでどれだけ掛かるか分からん。そうしてるうちに、さらに関係者を消されて結局、闇に葬られてしまうかもしれん…」
「それはおまえのミスリードじゃないのか?」
「エッ…?」
ドラスティクな五島の意見に恭一は目を見開いた。
「おまえが描いたのは、オレがネットから得た情報と自分の足で稼いだ情報をリンクさせ、ひとつのストーリーに仕立て上げる事だろう?」
「ああ、そうだ。だが、そのリンクする情報が消された」
「だから、それが固定概念なんだって」
五島は改まった口調をすると、コックのレバーをさらに開いた。