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魔性の仔
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魔性の仔A-7

「どうでしょう?よろしければ、そこまでお送りしますが」
「いや…しかし…」

 つい、口から出たお節介な言葉。男は、そんな気持ちに恐縮するが、

「構いませんよ。私は山の向こう側へ行く途中ですから。どうぞ、乗って下さい」

 その言葉に促され、男は刈谷のクルマに乗り込んだ。

「ありがとうございます」
「しかし、山の中にある村とは、ずいぶん昔から存在してるんでしょうね?」

 刈谷は率直な意見を男に投げ掛けた。すると男は深く頷いた。

「ええ。詳しくは知りませんが、なんでも鎌倉の頃よりここに存在すると…」
「鎌倉…すると、800年くらい前ですね…」

 答えた刈谷の顔は笑っている。まず、あり得ないと思っているのだ。
 それから10分ほど山道を走らせると、男が──この辺りで─と云った。
 そこは以前、少女を拾った場所からちょっと登ったところだ。

「どうも、ありがとうございました」

 雲水姿の男は、助手席のドアを開けて降り立った。

「ところで、何処に村への道があるんです?」
「ホラッ、そこの脇ですよ」

 刈谷の問いかけに男が指差す。その場所には小さな杣道が見えた。

「では、お気をつけて」

 刈谷は言葉を投げ掛けるとクルマを発進させた。その去り行く姿を、男はしばらく見つめた後、杣道へと入って行った。

 ──しかし、あれほど似てるとは…。

 再び走り出したクルマの中で、刈谷は男と少女の類似な部分を考えていた。

 ──どちらも日本人とは異なる容姿と美しさと雰囲気…それにあの場所…あの子を拾った場所からも近い。調べる価値はあるな…。

 クルマは頂上付近を抜け、下り道へと向かった。


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