魔性の仔A-5
──男と女─に変わるのに、時は幾らも掛らなかった。
部屋のドアが閉じた時、早紀の背後から刈谷の腕が伸びて抱きすくめた。
「ち、ちょっと…」
突然のことに、早紀は思わず刈谷の腕を掴んだ。
「…もう黙ってろ」
刈谷の顔が近づき、互いの口唇が触れた。熱いキスだった。
「ふう…ん…」
早紀の口の中に舌が滑り込んできた。2人の吐息が混じり合う。
刈谷は正面へと位置を変え、早紀の腰を引き寄せる。
「う…ん…刈谷さん…」
「…刈谷さんはよせ…圭右だ」
抱擁と口づけを交した2人は、勢いのままリビングに雪崩れ込んだ。
「ああッ!…あ…ん…」
刈谷は、リビングの奥にあるベッドに早紀を押し倒す。ジャケットを取り去り、シャツをたくし、ブラジャーを引き上げた。
小さく揺れて早紀の乳房が露になる。刈谷は優しく乳房を撫であげた後、敏感な部分を口に含んだ。
「ふうッ…んんッ…」
陶酔の中で身悶える早紀。望んでいたことが現実となり、気持ちが余計に昂ぶる。
しかし、刈谷の動きはそこで止まってしまった。
「……?」
早紀の捲れた服を元に戻すとベッドから降りた。
「…すまん。どうかしてた…」
刈谷はそう呟くと背を向けた。
「…何で…途中で止めるの?」
震える声が刈谷の背中に投げられる。が、彼は何も語らず部屋を出て行った。
「11時か…今から帰ると0時半過ぎちまうな…」
刈谷は中尊寺の元に連絡を入れると、早紀のアパートを後にした。