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こんな恋の始まり
【青春 恋愛小説】

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こんな恋の始まり-3

「好きなんだ。」
一瞬、何を言われたのかよくわからなかった。
「あの日、あそこにいたのは全部計画的なんだ。」
ぽつりぽつりと話を始める。
「卑怯かなって思ったけど…、弱っている時でもないと鈴奈は俺を頼ってくれないと思って、善人面して近付いた。」
ズルイよな、と苦笑いする。
「鈴奈が木島の事好きなのは知ってたよ。好きな子の事だからね。」
だから、あの時の言葉は憶測でもカマをかけたわけでもない。
ふぅっ…と拓海は息を吐く。
「善人面して近付いたのに、どっかで嫉妬してたんだな。気付かないうちに鈴奈を傷つけた。」
「違う!」
卑怯なのはあたし。自分の事しか考えないで拓海を傷つけてしまった。
「あたし…好きなの。」
「何が?」
拓海はきょとんとしている。
「拓海が…。」
沈黙が続く。

「…同情ならいらないんだけど。」
あたしの告白は、同情としてとられたらしい。
「自分でも…わからない。あんなに木島君が好きだったのに。…気付いたら、拓海が好きになってた。でも、信じられなくて、諦めようとしたんだけど諦められなくて…。」
必死で自分の想いを伝えるが、だんだん訳がわからなくなってきた。

「俺、もう待たなくていいの?」
いつもの笑顔。
「待っていて、くれたの?」

「ずっと待ってたよ?鈴奈が木島を見ていたように、俺は鈴奈を見ていた。」
らしくないクサイ台詞。
「じゃぁ、10ヶ月くらい?」
「ん〜?去年の入試の時、一目惚れしたからぁ、かれこれ1年?」
…1年。その間、どんな気持ちだったんだろう。
好きな人から他の人の話を聞いて…。慰めて…。
今更ながら自分のしてきたことに悲しくなる。
「俺、待ってるの得意なんだぁ。」
きっとこれは拓海の優しさ。
トン…と拓海の胸に頭を預ける。

「本当にあたしでいいの?」
ぎゅっと拓海に抱きしめられる。
「いいの。俺が仕向けた。鈴奈が俺を見てくれるように。」
あたしも拓海の背中を抱きしめ返す。

「あ、でもこれからは他の男の話はナシね。俺、ヤキモチ焼き屋さんだからぁ。」

―後日談。
「ねぇ、そういえば何であの時学校にいたの?」
そうそう、あたしが家着いてからまた戻ってきたんだからかれこれ1時間以上HRの後残っていたことになる。
「あぁ、あれぇ?あの日は木島の彼女と図書委員だったんだよ。で、彼女より先に教室行ったら
木島がいてねぇ。彼女の鞄もあったから、これは何かあるかなって隠れて見てたの。」
…悪趣味。
「そしたら、その後鈴奈が来た。…で、計画的犯行に及んだわけぇ。」
にっこり笑う。
やっぱり食えないヤツ…。
だけど、にくめない。
こんな恋の始まりもいいかもしれない。

=FIN=


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