こんな恋の始まり-2
この関係に終止符を打ったのはあたしだった。
「なんか、最近木島クンの話、出てこなくなったねぇ…。」
ふいに拓海が言った台詞にドキリとした。
そうなのだ。
自分自身戸惑っているのだけど入学式から半年以上好きだった彼のことが、気にも留めなくなっているのだ。
最近、拓海と話すことと言ったら、本当に他愛もない話ばかり。
「あ、ゴミついてるよぉ。」
そう言ってあたしの髪にふわりと触れる。
心臓がうるさく跳ね上がる…。
違う…こんなのあたしじゃない…!必死で気持ちを押さえようとするけれど上手くいかない。
…わかってる、でも認めたくない。正直なあたしの気持ち。
「…今日は、もう帰る。」
「え!?ちょっと、鈴奈?」
拓海が自分を呼び止める声がする…。
けど、振り返れない。
違う!違う!必死で否定する心と裏腹に、とっくに気が付いている拓海への気持ち。
混乱する。あたしはこんな軽い人間だったのかと。
ずっと木島君が好きだった。優しくて、かっこよくて、笑顔が印象的で…。
ずっと…。
なのに、今自分の心を占めているのは拓海だった。
木島君が彼女と仲良くしていても何とも思わない。
変わりに、拓海が他の女の子と仲良く話をしているのを見るだけで胸がムカムカする。
…今ならまだ間に合う。大丈夫、辛くなんなない。
自分に言い聞かせ、次の日の放課後拓海と会った。
「え!?何、それ、鈴…。」
「だから、そゆこと。」
努めて明るく笑顔であたしは言った。
「もう、いいって…。」
「そ、おかげさまで木島君への気持ちがラクになったから。…もう放課後、あたしに付き合わなくていいよ。」
大丈夫、大丈夫。あたしはポーカーフェイス得意なんだから。
じっ…と拓海があたしの瞳を覗き込む。
まるであたしの気持ちを探るかのように。
少しの沈黙の後
「わかった…。」
静かに言って踵を返し、教室を出て行った。
それから、今までのことが嘘のようにあたしと拓海は疎遠になった。
…疎遠になった、というよりあたしが一方的に拓海を避けていた。
自分の気持ちに気付かれないように…。
「あ…雨。」
放課後、帰ろうとしたところに降ってきた。
―確か、置き傘があったっけ…。
片道自転車で20分かかる家に濡れて帰る気はしない。
教室に戻ろうと廊下を歩いていると、ふいに腕を掴まれる。
「…っ!?」
振り返ると拓海だった。
「ちょっと、話があるんだけど。」
普段と違う、真剣な表情。
そのまま連れて行かれる。
進路指導室に入る。
2人きり。
心臓がうるさい。
どうしていいかわからずうつ向いていると
「ごめん!」
頭の上から拓海の声が聞こえた。
思わず顔を上げる。
そこには辛そうな顔をした拓海がいた。
「な…んで、拓海が謝るの?」
謝らなければならないのはあたしの方。
あたしの勝手に拓海を振り回してしまった。
「俺、鈴奈のこと傷つけたんだろ?」
何だかよくわからない。
呆然としていた。