Lesson xxx 4-1
ようやく登校出来るようになった私は相変わらず補習の毎日だった。
榊先生との補習も、あんな事があったのが嘘のように淡々と進んでいく。
先生を意識しないと言ったら嘘になる。
だけど先生は私を好きだから抱いた訳じゃない。
子供なんて相手にしないって言ってたもん。
きっとあの時は何かの気まぐれだったんだよね。
それを証明するように先生の態度は以前と全く変わらない。
「おい…。今のとこわかったのか?」
ハッと顔を上げた私は少しバツの悪い顔をした。
「……もう一度だけ説明するからちゃんと聞いとけ」
てっきり丸めたテキストが飛んでくると思ってたのに拍子抜けした。
先生の誘惑に成功したとはとても言えない私はそっとため息をついてノートにペンを走らせた。
「今日までよく頑張ったね。今度のテストは期待してるよ」
数学と理科の先生にそれぞれそう言われて私は頭を下げた。
「ずっと…ありがとうございました」
先生達は笑顔で応えてくれた。
これから榊先生の最後の補習だ。
最後の日でも先生の態度は何ら変わる事がない。
「よし。まとめのテストやるぞ」
手渡されたテスト用紙を解いていると先生の視線を感じてふと顔を上げた。
「何だ?」
それはこっちのセリフなんだけど。
「別に…」
無意識に頬が熱くなるのを感じたけど、そんな顔をみられたくなくてすぐに机に顔を向けた。
集中、集中。
解答で埋まったテストを先生に渡す。
この補習でずいぶん学力が上がった。
ついこの前までなら一問も解けなかったかもしれない。
ぼんやり先生の手元を眺めてると採点が終わった。
返されたテストは満点ではなかったけどほぼ丸で埋まっていた。
「やれば出来るじゃねーか」
…これって一応誉められたのかな…。
先生を窺うと珍しく柔らかい笑みを浮かべている。