月に祈る 1 -6
「あーもう、ほーんと、俺ってば、情けないよね」
誤魔化すように、ヘラヘラと笑いながら、言う。
「なぁ」
「ん?」
「弥勒はさ、すごく不器用で、臆病で、騒がしいし、アホだし、大事なおにぎりよこせとかいう、どうしようもないバカだけど」
「…え、若干、言い過ぎじゃない?」
「でもさ、これだけは知っておいてよ」
―そんな人間くさい弥勒が、僕は好きだよ。
ふっと目を細めながら、そう、朔は言った。
「…朔ちゃん」
「何だよ」
「や?だぁ?♪本当はそんなに朔ちゃん、俺の事好きだったのね?」
「なっっっ!!!」
「照れない照れな?い!おれも、朔ちゃん、だーいすきっ!」
俺が戯けながら、そう言うと、朔は顔を真っ赤にして。
「…言ってろ、もう、帰る」
スクッと立ち上がり、スタスタ歩き出した。
と、思ったのに、一度振り返って、白と緑の物体を放り投げる。
「おっとと」
しっかりとキャッチしたそれは、夕ちゃんお手製のおにぎりで。
思わず、顔がにやけてしまった。
「朔!!!」
「…また、明日な!」
そう、朔の背中に、叫びかける。
朔は、片手を挙げて、帰っていった。