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月に祈る 1 
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月に祈る 1 -5

「本当に、そう思ってるわけ?」

「え?」

「人の幸せばっかり願って、自分の事は少しも考えないの?」



朔が、珍しくそう聞くから。



「ははっ!さすが俺の、親友だな?朔は」


思わず、ふざけてみたけれど、朔は真っ直ぐに、俺を見ていて。


「…弥勒はさ、もっと欲張りになってもいいんだよ」

「僕には、弥勒や、夕や、父さんがいるように、傍で、弥勒のために笑ってくれる人がいたっていいだろ?」

「…俺には、朔ちゃんが、いるじゃない」

「もっと、もっと、だよ」


真っ直ぐな朔の目を、俺は見ていられなかった。



「ーなぁ、朔ちゃん」

「ん?」


「確かに、亜紀さんが幸せならいいやって、最初は思ってたんだ。修さんを好きな亜紀さんを、俺は好きになったから」

「うん」


「だけど、時間が経つにつれて、欲張りになっていって、怖くなって逃げたんだ」

「自分は何も望んでませんって顔をして、さ」

「見返りを求めないふりをして、ただ、亜紀さんの傍に、居たかっただけなんだよ」

「本当は、俺の方を見て欲しいくせに、失うのが怖くて、気持ち誤魔化して、さ」



確かに、最初は、憧れだったんだ。
幸せそうに笑う二人は、とても眩しくて、輝いていた。

亜紀さんが幸せそうに笑うなら、俺は幸せ。
その隣にいるのが、俺じゃなかったとしても。

あの人に向ける、無邪気な笑顔だったりとか、照れてはにかんだりする、修さんを好きな亜紀さんが、好きだった。
そうだったはずなのに。


涙を堪え、震える背中にもたれて、月を見たあの日から、俺の気持ちは少しずつ変化していって。


ただ、亜紀さんの幸せを願う、純粋だった気持ちは。


俺だけのために、俺の傍で、幸せそうに笑っていてほしい。
―あの人じゃなくて、俺を。

どうか、俺を好きになって。



そんな欲張りな気持ちへと、変化していった。



今まで、誤魔化し続けていた、本当の気持ち。

ただ、幸せを祈るんじゃなくて、一緒に幸せになりたい。
亜紀さんを幸せにしたい、願わくば、その隣で。


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