月に祈る 1 -4
―ポツ、ポツポツポツポツ。
地面を打つ音の間隔が狭まっていく。
次第にそれは、激しく地面を叩きつけるような、雨音へと変わっていった。
窓の外の空は、暗く、どんよりとしたねずみ色。
月の欠片一つも、見えやしない。
―まだまだ、雨は止みそうにもなかった。
途方もない気持ちになりながらも、それを誤魔化すように、俺は目を閉じた。
「修さんか、なんだか懐かしい名前だね」
「まぁ、俺と朔は、修さんが高校を卒業以来、会ってないもんね?」
昨日から降り始めた雨は、やむ事はなく、そのせいもあってか、人はまばらで、食堂はガラリとしている。
おもむろに、朔はカバンから、おにぎりを取り出すと、かじりついた。
「それ、具は何?」
「…からあげ」
「おにぎりの具、からあげかよ?!って、俺にも一口食べさせて?」
あ?ん、と、口を開けて、待ってみる。
もちろん、口に、おにぎりは飛び込んできたりはしなかった。
「…これは、夕が僕に作ってくれたおにぎりだから、弥勒にあげる分はない」
「そ、そんなぁ?!!俺も米、たーべーたーいー!!!」
「お前、さっき、カツカレー食べてただろ」
ピシャリと言い放つ朔に、とりつく島もない。
ちっ。
「それより、どうするのさ」
「へ?何が?」
「修さんに会ったんだろ、亜紀さん」
「あー、うん…もしかしたら、亜紀さん、まだ修さんのことって、俺は思うんだよね」
「おい」
「俺は、亜紀さんが、幸せになるなら、戻ってもいいのかもな?、なんて」
「弥勒」
少し強めの声で、朔が俺を呼んだ。
ハッとして、朔を見ると。