『It's A Wonderful World 2 』-5
なんで、コイツは―。
なんで、そこまで―。
バカなんだああああああああああ!
僕の叫びは空を覆う雲に突き刺さった。
「…桐山くん?」
鈴のような声に呼ばれて我に返る。
ふと視線を移せば―。
綺麗な眉を寄せて、僕を見つめる美しい瞳があって。
困った顔も、驚くほど美しい、けど今はそんな美しさが辛くて。
「ちゃ、ちゃうねん」
なぜか僕は関西弁になっていた。
「プギャーーーー!」
豚のように鳴いて、僕は逃げ出した。
「ちょ、ちょっと待って!」
待たない! というか僕を見ないでくれ!
こんなブタのように哀れな僕を。
一刻も早く彼女の視界から消え去りたい。
というかこのまま、物理的に消えてなくなりたい。
僕は走った。
気を失ったままピクリとも動かないバカを残して。
足がもげてもかまわない、と思いながら走った。
途中、校門のところで、マサキが真っ青な顔で親指を立てていた。
―グッジョブ!
死ね!!!!
長年培ったアイコンタクトで、僕らは短い会話を交わした。
僕は走った。
出口の見えない暗闇の中を進むように。
空は暗く、僕の恋路を暗示しているようだった。
続いてしまうのだけれどもね!