『It's A Wonderful World 2 』-2
「とにかく、シュンがここまで話してくれたんだ。俺たちでなんとかしてシュンと仁美さんをくっつけてやるよ!」
「マサキ、お前…」
「俺の時は何もしてくれないのに…」
感動する僕とは対照的にアキヒロがやさぐれた目をする。
「バッカだな、アキヒロー。このまま、シュンが上手くいけば、次はお前の番だぜ」
マサキが親指を立てる。
「順番がおかしい気もするけど、シュンのためだもんな!」
そう言いいながら、アキヒロも親指を立てる。
こいつら…。
僕は目頭が熱くなるのを感じた。
「俺たち、マブダチだろ?」
差し出されたマサキの大きな掌。
僕はそれを握り返しながら思った。
マブダチなんて、お前いくつだよ、と。
でも、こいつらは最高の友達だ。
「お前らは最悪だ」
風の強い日だった。
午後から曇り始めた空。
まだ午後六時だというのに、辺りは薄暗い。
嫌な湿気が肌にまとわり付く。
雨でも降るのだろうか。
「お前の恋路を助けてやろうって言う俺たちに、そんなこと言うかね」
マサキが呆れた顔でため息をつく。
今日もマサキの髪は全開で逆立っている。
一体、社会にどんな不満があるのかわからない。
「俺なんか、お前のために生徒会休んでまで来てるんだぜ」
アキヒロは心の底から残念そうだ。
「やめてしまえ、そんな部活」
僕たちは校門で、ある人を待っていた。
なぜそんなことをしているのか。
原因は俺の親友、バカ二人にある。
「なあ」
「なんだよ、シュン?」
「帰ろうよ…」
「なっ!? このチキンが!!!」
アキヒロごときに鳥呼ばわりされる。
これ以上の屈辱が他にあろうか。
「この俺のマーベラスな作戦が気にいらないとでも!?」
「何度考えても成功するとは思えないんだ」
そう何度考えたって、罰ゲームにしか思えない。
こいつらはアホだ。
「マジかよ! いいか、よく聞け」
アキヒロは盛大にため息をつくと、この世にもアホらしい作戦を説明し始めた。
「まず、俺が不本意ながらも、変装して部活帰りの仁美さんに襲い掛かる! で、悲鳴を上げた仁美さんをお前が助ける! で、仁美さんはそんなお前に惚れてしまう! 完璧すぎるだろ!?」
要は、アキヒロの頭にはウジがわいているんだ。
「まったく、お前は恐ろしいほど頭が切れるぜ…」
なぜかマサキが大絶賛していた。
「ほんとにそう思うんだな!? お前、本気でそう思ってるんだなあああ!?」
「う、うん」
マサキの額には汗がにじんでいた。
「ま、まあ俺たちを信用しろって、これでも結構モテるんだぜ、俺たち」
「すぐバレるウソをつくな!!!!」
「な、なんでわかった…」
「だって、お前の頭武器じゃん! 銃刀法違反じゃね?ってくらい尖ってるじゃん!?」
その時、空では雷がごろごろと鳴っていた。
「俺は知らず知らずのうちに犯罪を犯していたのか…」
マサキが打ちのめされている。
自覚がなかったらしい。
「お、おい来たぞ!」
突然、アキヒロが叫んだ。
マジかよ…。
来ちゃったのかよ…。
僕たちは、慌てて門の陰に隠れた。
僕は破裂しそうな心臓を抑えて、グランドの方に目を凝らした。