フライング〜flying〜-1
そこの小鳥達は、まだ飛び立つことが出来ずにいました。
住み慣れた安心感を失いたくないのです。
小鳥は言いました。
「もうすぐ巣立たなければいけないわ」
違う小鳥も言いました。
「お母さんから離れなければいけないのね」
それを聞いていた雄の小鳥も呟きます。
「それだけじゃない。僕達も離ればなれになってしまう」
一番小さい小鳥が
「そんなのいやだよ。ずっとここにいたいよ」
ピーピー声を上げて泣きました。
外の世界には知らないことがたくさんです。小鳥達は不安で不安でたまりません。
ここにいれば大切な兄弟も、優しいお母さんもいます。
天気の良い日にはお日様とお喋りして、雨が降れば皆で集まって体を温め合う。
ふと雨が止んだと思うと、頭上にはお母さんの翼が広がっていて…。
そんな家が小鳥たちは大好きでした。
それでも時は無情にも過ぎてゆき、とうとう小鳥達の巣立つ日がやってきました。
「さあ、子供達。そろそろ時間ですよ」
それでも、やっぱり小鳥達は飛び立てずにいました。
「いやよ!私、こわい!」
違う小鳥も言いました。
「私、お母さんから離れたくない!」
それを聞いていた雄の小鳥も呟きます。
「みんなとバラバラになりたくない!」
一番小さい小鳥が
「ずっとここにいたいよー!」
とピーピー泣きました。
「あらあらあら」
お母さんは困ったように笑うと、そのフカフカの羽で小鳥達をそっと抱きしめました。
「そんなこと思ってくれてるなんて嬉しい。あなた達、そんなにここが好きなのね。でもね、ここにいては分からない楽しいことだってあるのよ」
小鳥達は小首を傾げてお母さんの話を聞いていました。
「お母さんもあなた達ぐらいの時、巣立ちたくないって思ったものよ」
「お母さんも?」
ええ。お母さんは笑顔で頷きます。
「でも今は良かったって思ってる」
「どうして?」
お母さんは、小鳥達を優しい瞳で見つめて
「あなた達に会えたからよ!」
笑顔で言いました。