『六月の或る日に。1』-6
「夏樹の…側で、………夏樹のこと守りたいって………そう、思ったの。」
ああ、なんで。どうして。
忘れていたんだろう。
まだこんなに、鮮明に蘇るのに。
あの誓いは、本当はまだ、なくしてなんかいなかったのに。
どんどんと、歪んでいく。醜くなっていく表情を、自分で止められなかった。耐えきれなくなって、両手で顔を覆った。陽子がどんな顔をしてこれを見ているのか、気にする余裕もなかった。
ただ、泣きたかった。
夏樹と別れてから、初めて、泣いた。
*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*
『俺、今彼女と同棲してるんだ。』
夏樹が言ったその一言に、また一つ何かが壊れていく感覚に襲われた。もうこれ以上、壊れるものなんかないってほど、心は粉々になっているのに。
『……そう。』
そんなことまで、わざわざ言わなくていいのに、と思った。
『だから…、お前のこと送れないんだ。』
ああ、そうか。
帰る方向が、違うんだ。
今までは、デートの帰りは必ず、まだ実家に暮らしているあたしを、夏樹は家まで送ってくれた。
そんな優しさが、密かに好きだった。
でも、それも今日で終わりなんだ。