想-white&black-C-7
「悪いようにはしない。幸い双子達もお前を気に入っているようだしな。俺に逆らいさえしなければ手荒な真似はしないよ」
息を呑むほど綺麗な笑顔でそう告げると、長い指が顎をとらえそのまま唇で唇を塞いだ。
「改めて契約成立、だな」
楓さんは愉しそうに囁くと私の手を引いて、ベッドへと導いた。
―――!!
楓さんは再び唇を重ねると、背に手を回しそのまま後ろに身体を押し倒してくる。
「んんっ、ん―――っ」
慣れないキスにまだうまく呼吸ができず、だんだん苦しくなっていく。
ベッドの柔らかい衝撃を背中に感じると思うとやっと唇が離れた。
楓さんが覆い被さるようにしながら両手首を掴まれて見下ろしてくる。
「何するんですか、いきなり」
「何ってキスだろう? したいときにするんだよ、俺は」
「急にそんなことされても困ります」
「ははっ、そうか。まあ俺は困らんからな」
何が面白かったのか、そう言って見せた笑顔は今までで一番楽しそうで思わず目が離せなかった。
「あっ………、やだっ」
楓さんは私の両手首を片手にまとめると、自由になったもう片方の手で私の髪をすく。
その感覚が神経に伝わってきてゾクゾクッと震えが走った。
思わず身体に力が入り目を瞑ると、また唇に熱い感触が触れた。
「ん……うっ」
いつか好きな人とするものだと思っていたキス。
だけどその儚い夢は奪われてしまった。
キスの間には恋とか愛とかそういった類の甘い感情ではなく、あるのは楓さんの支配と欲情だけ。
それなのに久しぶりに触れた人の肌が心地よく思えてしまった。
自分身体が心を裏切ることが悔しくて、苦しくて、悲しくて……。
気が付けば、私の瞳からは涙が滲んでしまっていた。
「花音……」
そんな私の様子に気付いた楓さんが唇を離すと、身体を起こして私を見つめてくる。
「……そんなに泣くほど嫌だったのか?」
「分かりません……。でも別に何でもないです。あなたには逆らわないって約束だから……」
「……いい心がけではあるが、あまり気に入らないな」
楓さんは軽く溜め息をつくと私から離れたのだった。