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バレンタインの事情
【青春 恋愛小説】

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バレンタインの事情-3

1 図書の仕事も無事終わり、教室に鞄を取りに帰る。
カラカラ…。
ドアを開けると、びくっと窓際の影が動いた。
丁度、あたしからは逆光になり顔が見えない。
電気をつける。
「よっ、お疲れさん。」
たろちゃんだった。
HRが終わって既に1時間半は経過している。
…放課後にバレンタインラッシュがあったのか?
「…たろちゃんも、お疲れさん。」
「へ?俺、なんもしてないよ?」
きょとん、とする。
「…チョコレートのお呼びだしに忙しかったじゃん。」
つい、嫌味を言ってしまい自己嫌悪。
なんか嫌な雰囲気になってたろちゃんの返事も待たず
「こんな時間までどうしたの?」
話題を変える。

「…さよからのチョコ、もらってないなぁ〜と思って。」
首筋をポリポリ掻きながら言う。
「え…。」
言葉に詰まる。
たろちゃんはあたしの気持ちに気づいていたの?
目を丸くして驚いていると、途端に悲しそうな表情になった。
「義理すら、俺ってば貰えないの?」
シュン、としている。まるでお預けをくらった犬みたい。
が、突然
「あれ?それ?」
とあたしの鞄を指差している。
「え?何?」
たろちゃんが見つけたのは、鞄から少し顔を出した本命チョコ。
「…渡せなかったの?」
あたしは苦笑いを返した。

「それ、頂戴?」
俺へのチョコ忘れた罰で、とにっこり笑って手を出す。
「…いいよ。」
「え!?ほんとにいいの?」
頂戴、って言ったのはたろちゃんなのに、あげると言ったらわたわたしている。

あたしは、ゆっくり息を吸って
「それ、たろちゃんに渡そうと思っていたものだから。」
せっかくのバレンタインだから、勇気を出して精一杯の告白。
「ほんとはもっと早く渡したかったんだけど、たろちゃん呼び出されてばっかりでいなかったから…。」
またチョコ増えちゃったね、とたろちゃんを見ると顔を真っ赤にしている。

「…このチョコが1番欲しかったんだ。」
あたしの渡したチョコを抱えて照れ臭そうに言った。


〜Fin〜


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