『It's A Wonderful World 1 』-6
「どうせ俺はクソ野郎ですよ! ベンジョコオロギですよ! でも仕方ないさ! こうでもしないと喋れなかったんだから!! 情けない奴だよ! 笑えよ、笑えばいいだろ!!!」
アキヒロは逆ギレた。
まあ、アキヒロの言いたいことはわかる。
好きな子と仲良くなるためには、形振り構ってはいられない。
だが、しかし。
「ぶわははははははは」
僕は腹を抱えて笑ってやった。
「マジで笑ってる…、オニだ」
アキヒロが暑苦しい顔を歪めて傷ついた顔をする。
そんな顔をしても無駄だ。
間違っているのはお前なのだから!
「お前は負け犬だ!!!」
「なに!?」
「男だったら、もっとプライドを持て!! 女のために応援部を辞めて生徒会に入るような奴に誰が惚れる? しかも生徒会に乗り換えた理由はシタゴコロ100%だ! そんなキモい奴に誰が落とせる!? つうかキモい! マジキモい!!! なんだよ、その眉毛。細いっていうか、生えてないじゃん! 宇宙人じゃん!」
僕は今までの鬱憤を全て発散させた。
だって、胃が痛くなるんだ。
俺もこんなか、と思うだけで自殺したくなるんだ。
コノウラミハラサデオクベキカ。
「……」
アキヒロが白目をむく。
「だったら…」
もはやあと一撃でアキヒロは死ぬ。
それくらいのダメージを負いながらも、アキヒロが口を開く。
それは起死回生の一撃だった。
「だったら、シュンがお手本を見せてくれればいいじゃん…」
辺りが急激に寒くなる。
なに言ってんだこのアホ。
キューソネコをカムとはこのことなのか。
「な、何を言っているのやら…」
一瞬で攻守が逆転しそうな瞬間だ。
でも、所詮はアホ。
がんばって自転車をこげばハワイに行ける。
そんなことをマジに考えている男に僕が負けるわけない。
「そうやって、すぐに人に頼るのがお前のダメな―」
「アキヒロの言うとおりだ!!!」
突然、僕の声を遮ったのはマサキだった。
今まで僕たちのケンカにドン引きしていたのに…。
「シュンがお手本を見せるべきだ!!!」
なぜにアキヒロの見方をするんだ、ウニ頭よ。
「なんで僕が…」
「シュンは、俺と違ってクールでスマートなんだろ!?」
その通りだけど。
それは誰にも覆せない世の中の真理だけれども。
見事に、立場が逆転していた。
根本マサキ。
恐ろしい子…!
「シュン、俺は知ってる。いつも俺の方ばかり見ていたお前の目が、今は別の女を見ていることをな!!」
マサキどうした。
なぜに目を血走らせる。
「いや、お前のこと見てないし」
「そうか」
マサキはほんの少し残念そうだ。
「だけど、別の女を見ていることは否定しないんだな?」
「うっ」
しまった。
呻いてしまった。
「ふふふ、幼馴染の俺の目は誤魔化せないぜ」
「キモいからそういうこと言うなって」
マサキの家は僕んちの隣だった。
ちなみにアキヒロの家はその隣だ。
「シュン」
急にマサキが真剣な表情をする。
「なにさ」
「そろそろお前も、彼女とか作ってもいいんじゃねえの?」
僕は幼馴染の顔を見つめた。
そして、しみじみ思うのだ。