MY ROOM-1
不破鷹文。これがオレの名前。県内で?1の進学校に通う高校2年生。自分で言うのもなんですが、1年の冬までは定期テストも1位の座を死守してきた真面目君でした。
‥‥冬まではね。。
「久しぶりだねぇ。私の事覚えてる?」
高1のとき、突然ソイツはやって来た。
「...お、おう。元気だったか?」
やばっ、誰だっけこのヒト?全然覚えてねぇや。。「えーっと、何しにきたの?」
「今日ね、不破君に勉強教えてもらおうと思って...。不破君、頭イイもんねぇ。」
「う゛っ」
脇腹を肘でど突かれた。...なんだよこの女。
「まぁ、上がれよ。部屋階段上がってつきあたり。お茶もってくから、適当にくつろいでて。」
「母さん、あの人誰?」早速聞いた。
「誰って、忘れたの?楓ちゃんじゃない。あんたの親戚よ。」
そう言えば...やっと思い出した。彼女の名前は星野楓。同じく高校2年生だ。小さい頃、よく遊んだっけな。
「お待たせ。」
お茶を持って部屋に入ると、彼女は壁一面に飾られた賞状を眺めていた。「スゴイねぇ。こんなに賞とったんだ。やっぱ頭イイんだね。」
オレは体育会系じゃない。この賞状もみんな、この頭でとったようなものだった。
「..で、何処が分かんないの?」
「あ、数学なんだケド..ここ!」
「えーと、ここはこの公式を使って...分かった?」
「待って。自分でやってみる!」
カリカリ..シャーペンの音だけが部屋に響き渡る。
オレは彼女が問題を解いている間、何気なく顔を眺めていた。
小さい頃の顔しか覚えてないもんなぁ。10年振りかな会ったのは...。
よく見ると目が大きくてくりくりしている。可愛い。それにサラサラのショートヘア。さっき並んで分かったけど、かなり小柄だ。チョロチョロしそう。
「不破君、出来たよ。なにぼーっとしてんの?」「え!?あ、うん。」
不覚だ。見とれてた...「他には?」
「大丈夫。後はなんとか解けるかも。ありがとね!」
「いえいえ。もう帰るか?せっかく来たんだし、ゆっくりしてけば?」
「そーだね。バスも1時間くらいないし。」
その後、オレたちはいっぱい語り合った。主に一緒に遊んだ想い出話だったが、10年間の隙間を埋めるように、たくさんたくさん話した。
もとは口下手で、女子と話すことは苦手だったんだけど。。
「そーいえば、星野ってどこの高校?」
話が途切れないようにふと聞いてみた。
「私?商業高校だよ。受験ヤバそうだったから、レベル下げたんだ。」
「ふーん。そうなんだ。」
「本当は鷹文と一緒の学校行きたかったのよねぇ、楓ちゃん!」
「えっ!?」
「なっ!?母さん、いつからいたんだよ!?」
なんちゅう親だ盗み聞きしてやがった。
「楓ちゃんはね、鷹文と一緒の学校がイイって、頑張って勉強したんだからね!それなのにあんた、男子校なんか行くって言うからぁ。」
「え、そうだったの?」楓の顔が赤くなるのが分かった。
「やだ、おばさんったら。。何処で聞いたんですか?」
今までの元気は何処へやら、かなり挙動不審だ。「鷹文も、もっと女の子の気持ち分かってあげなきゃね!」ゴツゞ
本日2度目の肘をもらった...。
「楓ちゃん、お父さんが迎えに来てるわよ。心配してたみたい。」
「あ..ハイ。」
ずいぶん長いこと話してたらしい。
「あ〜びっくりした!不破君のお母さんあんなこと言うなんて。気にしないでね!」
「...あぁ。」
・
・
長い沈黙を破ったのは楓だった。
「...ねぇ?」
「ん?」
「..また..来てもいい?」耳まで真っ赤にして言った。
「いいよ。いつでも来いよ。」
「ありがとぉ。じゃーね!」彼女は満面の笑みだった。