想-white&black-B-1
ベッドに腰掛けた楓さんが冷ややかに私を見て笑う。
彼の言う通り、私はゆっくり立ち上がるとふらつきそうになる身体をどうにか支えながら楓さんの前に立つ。
「そこで止まれ」
突然の命令に私は思わず身体をびくつかせて足を止めてしまった。
楓さんとの距離は五十センチ程。
そんな中挑発するような眼差しを向けてきた。
「花音、俺に"私を抱いてください"ってお願いしてみろよ」
「なっ……!!」
いきなり何を言出すのかと目を瞠はった。
確かに何でもすると約束はした。
自ら進んでなんてあまりにも酷い。
どれだけ私をバカにすれば気が済むのだろう。
怒りに握り締めた手が震える。
そんな私を見て目の前の男は嘲笑うような声をもらした。
「おいおい。まさかとは思うが……、ついさっきの言葉忘れた訳ではないだろうな」
「……っ」
「いいんだぜ、俺は別に。お前が後悔するだけだからな」
どこまでも卑怯な男。
人の弱味に漬け込むような真似がよくできるものだ。
「どうするんだ、ん?」
こちらを真っ直ぐに捕らえながら冷たい笑みは変わらない。
むしろこの状況を楽しんですらいるようだった。
私は身体を悔しさで震わせながら唇を噛み締める。
「ほら早く言ってみろよ、その身体に着ているいるものを脱いで俺を求めてみろ」
風呂上がりの身体に着ていたのは下着と瑠海さんと瑠璃さんが用意してくれたピンク色のバスローブ。
それを脱いでしまえば今日会ったばかりのこの男にほとんど晒すことになる。
「お前の言ったことを証明してみろ。そうしたら信じてやるぜ」
じわじわと追い詰める言葉に私は目をぎゅっと瞑ると、とうとう震える唇を開いた。
自ら望んで抱かれる。
今日出会ったばかりのよく知らない男に肌を晒して。
卑怯にもそれが交換条件。
「わ、分かったわ」
「へえ? じゃあ早速見せてくれよ」
楓さんの後方には広いベッド。
心臓が嫌な鼓動を速めて息が詰まりそうになる。
右手を胸の前でぎゅっと握ると緊張からか掌が汗ばんでいるのが分かった。