想-white&black-B-2
「どうした、早くしろ」
楓さんの口調に苛つきの色が見え始めた。
「わ、私……私を……っ……、やっぱりダメっ!!」
この男が望む言葉を言おうとした。
この男の言う通り、その覚悟をしたはずだったけど。
やっぱり怖かった。
経験のない私にはとてもじゃないができそうにない。
好きでもない人となんて心も身体も拒絶してしまう。
いくらどんなにこの人の容姿が良くても私には無理だ。
「……!!」
そんな中うつ向いていた私の耳に楓さんの溜め息が聞こえてきた。
私はハッとして顔を上げるとそこにはつまらないといったような冷めた目で私を見据える楓さんがいた。
「"ダメ"……か。なら仕方がない。お前も両親のことは諦めるんだよな?」
そう言って楓さんが腰掛けていたベッドから立ち上がると、私を一瞥して横を通り過ぎた。
「そ……れは……」
諦めたくなどない。
全て自分の元に取り戻したい。
「諦めたくないか?」
すると突然後ろから楓の声が響いた。
思いがけず優しげな声色に振り向くと、目の前に楓さんが立っていた。
もしかして気が変わったのだろうか。
微かに希望が見えた気がして首を縦に振る。
私を見下ろす楓さんの双眸は何を考えているか分からない。
だがチラッとその瞳の奥に昏い炎が見えた。
「全てお前の望むとおりにしてやるって言っているのに、俺の言うことは聞けないとはな。言ったはずだぞ、逆らうな、と」
「え……っ?」
突然腕を掴まれて床に引き倒された。
絨毯が敷き詰められているとはいえ、打ちつけた背が痛む。
痛みに顔を歪めている間に、楓は私の上に馬乗りになると着ていたバスローブの前を開き、腰紐を使って手首を一纏めに縛り上げてしまった。
「なっ、にするんですかっ」
身体を捩りながら逃げ出そうとするが、想像以上の力で押さえつけられて適わない。
身体が軋むように痛む。
だが彼はそんなことも構わず力任せに押さえつけ、組み敷いてきた。
見上げるとすぐ側に楓さんの顔があり、瞳の奥にはさっきよりも色濃い情欲の炎が燃えている。
だが凍るように冷たい視線が私を貫き、身体を震わせる。