想いの行方V-1
一番の親友。
良き理解者。
常に味方。
だけど時にライバル。
なんだかずっと、あいつには勝った気がしねぇ。
負けっぱなしなんて柄じゃねーんだよ。
【想いの行方・矢田潤平】
俺は今すこぶる不機嫌だ。
原因は目の前で楽しそうに話している三人。
「矢田、そんなにいじけるなよ」
「うるせっ。いじけてねー」
親友の英士は呆れたように息をついた。
三年での新しいクラス、俺だけ隣のクラスになった。
なのに、目の前の三人は楽しそうに話している。
親友:速水英士
俺の彼女:西野心
彼女の友達:佐田麻衣
なんて薄情な奴らなんだ。
特に心は俺と離れて悲しくないのか?
「ま、友達なんていっぱいいるでしょ」
……悲しくないらしい。
いいさ。
心が実は俺の事好きなのは分かってる!
キーンコーンカーンコーンなんてマヌケな予鈴が鳴ると、早く自分の教室に戻れと心に背中を押された。
渋々隣の教室へ移動する。
廊下からちらりと振り返ると、英士が心にDVDを貸していた。
素直に喜んでいる心。
………まただ。
何か負けたようなこの感じ。
英士とは小学校からの腐れ縁だ。
楽しい事もヤンチャな事も何でも一緒に経験してきた。
俺はいつもやりすぎる。
それを英士はいつの間にか一歩下がって見てて、いざとなったら見事なフォローを繰り広げる。
性格的にもほぼ真逆な人種、趣味もバラバラ。
だけど妙に女の趣味は似てる。
それが厄介なわけで…。