想いの行方V-7
「結果はとっくに出てるだろ。てか、そもそも勝ち負けなんてねーよ」
俺は口元をへの字に曲げる。
英士はどこか遠くを見つめながら再び口を開いた。
「西野は俺といるとき、いつも矢田の話をする。ケンカしたとか、ムカつくだとか、本当仕方のない奴だって………笑いながら話してるよ」
そう言うとようやく英士は立ち上がった。
俺の口元は少しだけ緩んでいる。
おまけに空は快晴だ。
「そういうことだよ」
風はただ穏やかに、俺の猫っ毛の髪を揺らす。
地面に置いていた鞄をひょいと持ち上げる英士。
"勝利の女神が西野だとしたら、とっくにお前に微笑んでる"
そんなキザな台詞をサラっと言ってのけるなんて、西洋人もびっくりだ。
英士が日本人に生まれたのは絶対間違ってると思う。
「これ何か知ってっか?」
ポケットから取り出したお菓子を英士の目の前にかざす。
英士は呆気にとられながらも冷静な返答をした。
「保健室でもらった?」
「心が好きなお菓子!」
俺が自信満々にそう言うと、英士は吹き出しながら笑った。
「ぷははっ…知らねーよ」
俺は満足げにお菓子をポケットに戻した。
俺の肩にぽんと手を置きながらドアへ向かおうとする英士の背中に、俺は宣戦布告をした。