想いの行方V-5
気乗りしなくて授業はサボることにした。
こういう時は保健室。
バレンタインデーの時の心みたいだ。
保健医の女の先生は俺に甘いから、快くベットを貸してくれた。
ついでに紅茶とお菓子までくれた。
俺はそのお菓子をポケットに入れる。…心が好きなお菓子だから。
『授業サボってんの?』
メールが苦手な俺は返信がいつも遅くなるけど、心からのメールは別。
『気乗りしね〜』
『どこにいるの?』
『保健室。何、迎えに来てくれんの?笑』
『放課後は速水と話あるんでしょ。先帰るから』
そんな心からのつれない返信がきたあと、6時間目終了のチャイムがなった。
保健医の先生にお礼を言って、俺は重い足どりで屋上へ向かう。
自分から呼び出しといて、なんで俺がこんな気分になってるんだか…。
屋上のドアを開けると、風が強く吹き込んできた。
俺は校門を出て行く心を確認し、学ランのポケットから煙草を取り出す。
心は煙草が嫌いだけど…今は吸わずにはいられないわけで。
ライターは風が強いせいか、ガス欠か、なかなか火がつかない。
あたふたしていると、横からすっとライターが差し出された。
「昨日もそれ火つかねーって怒ってたろ?」
英士は口元を緩めながら、俺にライターを握らせた。
煙草吸わないくせにライターなんか持ち歩きやがって…。
その理由は…"俺が吸うから"。そんなの分かってる。
俺は手渡されたライターで煙草に火をつけた。
「で、話って?」
そう切り出す英士にライターを投げた。
だけど英士はすぐにそれを投げ返してきた。