想いの行方V-3
「矢田くん、おはよう!」
「おー、麻衣ちゃん」
朝の通学路、珍しく佐田と一緒になった。
佐田は始め俺のファンだったらしいが、いつの間にか英士に一直線だとか。
何となくそうかと思ってたけど、心から聞いて確信を得た。
「心とは最近どう?」
「別に普通〜」
「昨日もDVDのことでケンカしたんでしょ?」
「…俺はアクション系以外は寝ちまうって言ったのにあいつが…」
「二人にとってはケンカも普通のことだもんね」
ふふっと含み笑いを浮かべる佐田。
妙に分かりきってるとこがちょっとだけ英士みたいだ。
俺は猫っ毛の髪をくしゃっとかいた。
「麻衣ちゃんはどう?」
「え?」
「英士とは」
「あ〜…早くも片想い歴一年に突入しそう」
「告らねーの?」
「ん〜…いまいち自信がね…」
眉を下げて頼りなさそうに笑ってみせる佐田。
その表情に俺まで眉が下がりそうだ。
微かに心と英士の声がして、俺はパッと顔を上げた。
数メートル先に心と英士が並んで歩いている。
あの二人は家の方面が同じだから登校が一緒になるのはたまにあることだ。
あえて確認はしないけど、たぶん俺と佐田は今同じ表情をしていると思う。
「……まだ言えないよ」
佐田は小さな声でそう呟くと、パッと軽やかに数メートル先の二人のもとへ駆け寄って行った。
笑顔で迎え入れる心と英士。
俺の足はいまだに地面に張り付いたままだ。