想-white&black-A-9
「あなたの……、言う通りに……」
「聞こえないな」
私の消えそうな声でもこんな近くにいて聞こえないはずはない。
どこまで私を貶めるつもりなのだろう。
だが私は逆らう力を持たない。
「あなたの……、楓さんの言う通りにします…」
「いい子だ。それでいい」
満足げな慇懃な声が耳に響く。
そして妖しく光るその双眸に囚われた。
「さぁ、お前の"仕事"はこれからだ。こっちへ来い」
流れ続ける涙は目の前の大嫌いな美しい男の姿を歪めていった。
―――これが契約と言う名の私達の絆の始まりだった。