遠恋ーえんれんー泪side-1
ねぇ美音
こんな夜に君は今なに思うの?
僕のこと?
それとも別の人?
織姫と彦星のがずっと幸せだよ
だって年に一回は会えるんだもん
僕と美音は年に一回会うことさえ叶わない
天の川なんてくそくらえだ
『遠恋』泪side
「泪、もうちょっと腰落とせない?」
「あっ‥はい!こんな感じですか?」
そう言って、僕は少し腰を落としてポーズを決める。
今は民族舞踊の稽古中。
もうすぐ舞台なので、みんな気合いが入っている。
「あぁ‥そう!それでいいわ。」
「ありがとうございます!」
汗が床に落ちる。
ゆっくりな動きの方が、実のところ筋肉を使うのだ。
民族舞踊といえど、筋肉がつく。
僕、脱ぐとすごいですよ?
「お疲れ様でした!」
稽古後にシャワーを浴びて、稽古場から桜並木が続く道へ飛び出す。
しかし沖縄の桜シーズンは1月。
いくら今が4月といえど、桜はとうの昔に散ってしまっている。