遠恋ーえんれんー泪side-4
『‥はい。』
「美音?」
『うん。』
受話器越しの3ヶ月ぶりの美音の声は当たり前だけど前と全然変わらなくて、僕は安心する。
「美音ちゃん、元気してた?」
『うん。』
「夕飯食べた?」
『うん。』
「‥怒ってるの?」
『うん。』
そりゃ当然か。
3ヶ月も電話もメールもせずに、美音を放っておいたんだから。
忘れてたわけじゃない。
美音を忘れたことなんて一日たりともない。
けど僕は電話できなかった。
メールの返事を送れなかった。
怖い。
美音に別れようって言われるのが怖い。
だから僕はいつも余裕のフリをする。
「怒んないでよー。ごめんね。忙しくてさ。」
『‥そう。泪がそうゆう態度なら、あたし他の人選ぶよ?』
ごめんね美音。
寂しい思いさせたね。
けどどうしても僕は疑ってしまう。
僕の方が好きな気持ちが強いんじゃないかって。
僕の方が寂しいって思ってるんじゃないかって。
「あははっ‥別に良いですよ?まぁ、美音ちゃんと付き合えるのは僕くらいしかいないと思うけど?」
お願い、僕を捨てないで。
いつ別れても良いよって余裕の態度を示すことでしか自分を保てない僕だけど。
本当は捨てられるのが怖いんだよ。
『泪だってモテないくせに。』
「それがさ、聞いてよ。今日後輩の女の子を家まで送ったんだけど、多分僕のこと好きだと思うんだよねぇ。」
ごめんねイレー。
イレーの純粋な僕への想いは、美音の嫉妬を掻き立てるためだけの道具になる。
『それはどうもお疲れ様でした。泪はむっつりスケベで顔に出やすいから気をつけてね。あ、そうそう。あたしね、今日告白されたんだ。』
思わず泣きそうになる情けない僕。
ごまかせ。泣くな。