遠恋ーえんれんー泪side-3
「先輩さ、かっこいんだからもっとちゃんとすれば?髪は適当に一つ縛りだし、メガネは鼻までズリ落ちてるし。」
「んー‥わかったわかった。」
「もう!絶対わかってない!」
「いーの。別にかっこよくしたって、見てもらいたい人はココにいないんだから。」
「‥‥。」
あ。
拗ねちゃったかな。
でも。だって。本当なんだもん。
美音はココにいない。
電話で僕のファッションがわかるわけでもないし、メールで僕の髪型がわかるわけでもない。
だから今は別にかっこよくする必要もない。
「そう拗ねないで。家まで送ってあげるから。」
「はーい‥。」
僕は知ってる。
イレーが僕のことを好いてくれてることを。
けど僕は知らないフリをする。
今の関係が気持ちいいから。
イレーの気持ちには応えられないから。
「私、今好きな人いるんです。」
おっと。まずい。
これは告白の流れになるのかな。
「‥へぇ。そうなんだ。突然だね。‥どんな人?」
どんな人?って質問最低だな。
自分のことだって知ってんのに。
「頭おかしい人なんです。」
「あ‥そう。」
ちょっぴり傷付いた。
もしかしたら僕じゃないのかもしれないぞ‥
「けど好きなんです。」
止めてくれ。
僕は卑怯な人間だからストレートな想いに弱い。
なんつうか、自分の欠点を改めて見せ付けられてるような気持ちになる。
自分にはないものを見せ付けられてる気分になる。
「‥そか。あ、イレーの家、そこの右端の家だろ?じゃあ僕帰るから。また明日ね。」
何か言いたげなイレーを残し僕は逃げた。