イヴの奇跡V-1
あれから長い月日が流れた。
それでも12月24日。
イウ゛の夜は今もまるで昨日の出来事のように圭は感じていた。
サファイヤブルーの瞳を持つ大手ブランド会社の若手社長。
父はアメリカと日本を繋ぐ会社の管理者で母は世界を飛び回る有名モデル。
それが神崎圭(かんざきけい)
彼の名前だ。
そんな神崎に12月24日。
イウ゛の夜に拾われた一匹
…否、一人。
フワフワの肩まである髪にくりくりの瞳を持つ綺麗な顔立ちをした彼女の名前はイウ゛。
神様の悪戯か突然変異か、それとも他の何かなのか…。
とにかく、今は神崎と同居している。
『知らない人間が来ても扉を開けるなよ?』
そう言い、今日も朝早くイウ゛の主人、神崎は玄関で服装を整える。
『はぁーい♪』
にっこりと可愛く笑うイウ゛。
パジャマにエプロンの姿で玄関に立ち、日課の如く神崎を見送る。
『じゃ、行って…』
そう言い家を後にしようとしたがスーツがつんっと突っ張る。
『早く…帰ってきてね?』
振り返れば、寂しげに自分を見つめる可愛い可愛い彼女。
『あぁ、早く帰るから。そんな顔したら余計に行きたくなくなるだろう…?』
そう言い、軽い口づけ。
『う〜…』
それでもまだ不満なイウ゛。
本当は出社なんかしたくないのであろうが、彼は会社の管理人。自分の責任を充分に理解しているつもりだ。
『じゃあ夜にな。』
『はぁーい……』
神崎にポンポンと頭を撫でられて渋々見送るイウ゛。