想-white&black- @-1
―――苦しい……。
―――息が……、息ができない……。
誰か助けて……、パパ……、ママ……!!
私の周りはみるみるうちに水で埋め尽くされて、呼吸を奪っていく。
苦しくて冷たくて、身体は思うように言う事をきいてはくれない。
早くここから逃れたい。
楽になりたい。
『助けて、誰か助けて……!!』
そこで記憶は途切れていて、次に目が覚めた時には辺り一面真っ白な世界の中にいた。
「かわいそうにねぇ、まだこれからだっていうのに…」
「居眠り運転をしていたトラックに突っ込まれそうになったのを避けたのがそのまま湖に…」
「娘1人生き残っていて良かったのか悪かったのか…」
亡くなった両親の葬式に来ていた親戚達の声が雑音のように聞こえてくる。
親戚とは言え、ほとんど会うこともなかった他人達は好き勝手言い放題だ。
憐れんだ顔をして、心の中では何を思っているのか計り知れない。
葬儀もほとんど終わり、私は私を残していなくなってしまったパパとママの遺影の前で座ったままただぼんやりと眺めていた。
冬の終わり、あれだけの事故だったにも関わらず、私に大きな怪我や後遺症はなくて葬式にも何とか無理を言って出ることができた。
そんな中親戚達は私を横目で見ながら話をしている。
「で、どうすんだ。あの娘は。まだ高校生だろ?」
「家は無理だな。子供も多いし金はかかる。とてもそんな余裕はねえな」
「それなら私のとこもちょっとね…。こっちも介護で忙しいし、そんな余裕なんかありゃしないわ」
「お前んとこはどうだよ。夫婦2人だろう」
「勘弁してくれよ、何を好き好んで……。だいたい家のヤツがいい顔しねえさ」
私のこれからの引き取り先の話題で揉めている。
私の存在なんてただのお荷物で厄介な存在にしかならない。
そんなことはこの人達の顔を見た時から分かっていたことだった。
例え決まったとしても望まれて行くわけではないから身の置き場がないのも目に見えている。
私は震える拳を握り締めながらすっと立ち上がり、少し離れたところで揉めている親戚達の前に歩み寄った。