想-white&black- @-7
「後で教えてやる」
そう一言言い残し、また踵を返すと今度こそ長い廊下の奥へ消えていってしまった。
「あの……、この部屋に私一人、ですか?」
瑠海さんと瑠璃さんに案内された部屋は一人で過ごすには広すぎて何だか落ち着かない。
家具も電化製品も一通り揃っていて、下手なアパートやマンションの部屋より広くて綺麗だ。
「もちろんです。ここは楓様が特別にご用意されたお部屋ですから。お好きにお使いください」
瑠海さんが私に向かってにっこりと花のように笑った。
「何かご用がありましたら私や瑠海に何でもおっしゃっていただいて結構ですわ」
瑠璃さんもそう言ってくれた。
それにしてもこんな立派すぎるほどの屋敷に住んでいる英楓とは、一体どんな人なんだろうか。
「あの……。瑠海さん、瑠璃さん。ちょっと聞いてもいいですか?」
「はい、何でしょうか」
私は思い切って二人に聞いてみることにした。
さっきから……、いや、最初に出会った時から思っていた事を。
「英楓さんって……、一体何者なんでしょうか?」
私の尋ねたことにびっくりしたのか二人とも目を見開いて止まってしまった。
そんなに変な事聞いただろうか?
瑠海さんと瑠璃さんはお互いに見つめ合うと、何か納得したのか少し頷いてまた私を見た。
「花音様、英家をご存じではないのですか?」
「英、家……。ごめんなさい、分からないわ」
瑠海さんの言葉に私は首を横に振る。
記憶を辿ってみても思い当たらない。
「英家は遥か昔、戦国時代から続く由緒ある名家です。楓様はその英家ご長男。世が世ならば楓様は一国の主の跡継ぎになれますわ」
「そ、そうなんですか……」
瑠璃さんの話は想像以上にスケールが大きく、まるでドラマか映画でも見ているかのようで私には現実味がない。
「今はいろんな企業を手掛け、政財界にも大きな影響力をお持ちです。英グループの正式な後継者が楓様です」
「このお屋敷は楓様がお父様である会長から譲り受けられたのですよ。ですからここの主は楓様ですわ」
もう私は言葉も出なかった。