想-white&black- @-6
――しばらくしてリムジンが静かに止まった。
「おい、着いたぞ。降りる支度をしろ」
英さんの声とほぼ同時にドアが開かれて私は恐る恐る車の外に出た。
黒塗りのリムジンから降りるとそこには目を疑うような光景が広がっていた。
目の前にそびえ立つ家…と言うよりは洋風の屋敷。
庭(?)は広大に広がりうっすら積もった雪が何とも言えず美しい風景を作り上げていた。
一体どこからどこまでがこの人の敷地なのだろう?
そんなことを漠然と考えながら呆然としていると、英さんに促されるように屋敷の玄関をくぐる。
中に入るとそこには3人の男の人と2人の女の人が立っていた。
シャンデリアもインテリアも全てがきらびやかで華やかで高そうな物ばかり。
ただただ目の前の光景に圧倒されて再び呆然とするしかなかった。
一体ここはどこなの……?
「あの……、この人達は……」
「家で働いている使用人達だが……。何をぼーっとしてるんだ。行くぞ」
「はっ、はい」
背の高い英さんの横に並ぶと背の低い私はますます萎縮してしまいそうだった。
たが当の本人はそんな私にお構い無く歩いていく。
「お帰りなさいませ、楓様」
英さんが近付くと同時に並んでいた人達が一斉に頭を下げた。
「ああ。何か変わったことはなかったか?」
「いえ、何ごとも滞り無く。……しかし楓様、そちらのお嬢様は…」
英さんより少し年上程の男の人が私を見て英さんに尋ねた。
「これか? こいつは間宮花音だ。ちょっと拾ってな。今日からここで暮らさせるからそのつもりでいろ」
「……そうですか。承知致しました」
その男の人は英さんの言葉に返事はしたものの、あまり歓迎しているような表情ではないようだった。
「おい、瑠海(ルミ)に瑠璃(ルリ)。花音を部屋に案内してやれ」
「「はい」」
英さんはよく顔の似た女性二人にそう告げるとそのまま屋敷のどこかへ行ってしまいそうになる。
おっとりした雰囲気の瑠海さんと少し気の強そうな瑠璃さんはどうやら双子らしくそっくりな顔をしていた。
私より年は上だと思うけど……。
二人とも大人っぽく綺麗な人だと思った。
「さあどうぞ、こちらですわ」
「私達の後についてきてくださいませ」
二人が着いてくるように促すけど、私は英さんを引き止めた。
「待ってください!! 私は何をすればいいんですか?」
私の大きな声に英さんが足を止めてこちらに振り向いた時、少し笑っているような気がした。
それは決して優しい微笑みではなく、何かを企んでいるような笑み。