想-white&black- @-5
「何から何まで……。ありがとうございます」
感謝の言葉と共に頭を下げると、英さんの口からは予想もしていなかった言葉が返って来た。
「別にお前のためではない。後で文句でも言われたらうるさいからな」
そんな言い方って……。
そう思いながらも何から何までしてもらっている私は言い返す事もできずに唇を噛み締めた。
だけどそれにしたって"どうして私を引き取った"だろう。
葬式にまで来る程なのだから両親とは面識があったはずだろうけど。
「あの、英さんは……、両親と知り合いだったんですか?」
にこりともしない男の様子を伺うように尋ねると、英さんはチラリと横目で私を見てすぐにまた視線を外す。
―――愛想悪っ……。
つい心の中でそう悪態をついたていると、英さんは前を見たまま口を開いた。
「……お前の両親は……、間宮さんは昔俺の家庭教師をしてくれていた」
「パパとママが……?」
「ああ、ほんのガキの頃の話だがな」
「そうだったんですか……」
初めて聞く話に私はそれ以上言葉が出なかった。
「お前は……何も覚えていないのか?」
「え?」
英さんの言葉の意味が分からず私は英さんを見つめた。
"覚えてないのか"……って、何を?
「まあいい、大した事ではないからな。……着いたようだ」
車が一旦止まり、またゆっくりと走り出した。
着いた……って一体どこに着いたのか。
車はまだ走り続けている。
窓から見えるのは林のような森のような所だったが道はしっかり舗装されているようだった。
「あ、あの……。今着いたって……?」
「もう俺の家の敷地内だ。あともう少しすれば屋敷に着く」
敷地内ってことは今走っている所は庭ということなのか。
私は驚きと不安を隠せないまま窓から見える景色をただ見つめてる事しかできなかった。