想-white&black- @-4
「急だろうが何だろうが今ここで決めるんだ。こいつらの元で肩身の狭い思いをするのか、女一人で惨めな生活をするのか。それとも俺の所に来るのか。衣食住には困らん。学校にも行かせてやる」
「でも……、見ず知らずの人の所になんて」
私が断ろうとした時英さんの眉がピクリと顰められる。
「ならば俺の屋敷で働きながら住むというのならどうだ」
「えっ?」
「それならばまだ気が楽だろう? 住み込みという形で働きながら学校にも行けるぞ」
確かにそれならいくらか気も楽かもしれない。
例えば今の家を売って一人で暮らし始めたとしても家賃だってあるし、どのくらいお金がかかるのか分からない。
働く所だって見つかるかどうか。
それならお金を貯めていずれ出て行けば……。
それに、この叔父や叔母の元で暮らすよりはいい。
私は決意を固め俯いていた顔を上げると英さんの顔を見つめた。
「……よろしくお願いします」
そう告げると英さんが一瞬微かに笑ったような気がした。
「そうか、では行くぞ。一樹、後のことは任せるから車で待っている」
「かしこまりました」
英さんは私の手を取り唖然とする親戚達に背を向けて歩き出したのだった。
半ば強引に今さっき会ったばかりの綺麗な男に腕を引かれ、辿り着いたのは生では初めて見る黒塗りの高級車の前だった。
「これって、リムジン……?」
「さぁ、乗れ」
私の呟きなど聞こえていないようでドアを開けられたところに乗るように促してくる。
こんな車に乗っているなんて、本当に一体何者なのだろう。
恐る恐る中に脚を踏み入れると車とは思えない豪華さと広さ。
目眩がしそうだ。
車に圧倒されて場違いな気すらする。
私はシートの隅で遠慮がちに座っていたのだが、聞きたいことは山ほどある。
「あ、あの……」
「何だ」
張りのある聞き入ってしまいそうないい声ではあるが、共に他人を寄せ付けないような口調は思わず萎縮しそうになる。
「これからどこに行くんでしょうか? それに、パパとママのお葬式の後片付けとか……」
葬儀自体は終わったとは言え何もかも置いてきてしまった。
できれば持ち帰りたい物だってたくさんある。
「お前は何も気にしなくていい。後の事は家の者に手配させている。すぐにお前の荷物も全て運ばせる」
英さんの言葉に胸をなで下ろした。
一見冷たそうに見えるけどいい人なのかも、そんな風にすら思い始めていた。