想-white&black- @-3
「その様子ですとあなた方はこのお嬢様を引き取る事を渋っていらっしゃるようだ。もし異存がなければこちらでと私の主人が申しております」
「しゅ、主人……?」
私はこの男の人の言ってる意味が分からずただぽかんと口を開けて眺めていた。
そんな私を見て男の人がにっこりと穏やかに微笑む。
「はい。あちらにいらっしゃいます」
そう言って視線を移した先には一人の男の人。
遠くからでも分かる長い脚で段々とこちらに近付いてくる。
その姿は何て言ったらいいのか分からないけれど、ただ綺麗だと思った。
歩き方一つでさえ隙がなく、その人が放つ圧倒的なオーラはその場にいた誰もが目を惹きつけられている。
背はスラッと高く手脚も長くて、時折風に吹かれる漆黒の黒髪が印象的だった。
男なのにひどく綺麗な顔立ちはすれ違う人みんなが振り返る。
こちらを見据える双眸は何もかも見透かすようなヘイゼル色の瞳。
高価そうな喪服の黒のスーツを着こなし、よく映える若くて美しい男。
目の前に立ち止まると笑うでもなく、じっと私を見下ろしてくる。
「久しぶりだな、間宮花音。俺の名前は英楓だ」
間近で見る『英楓』と名乗るその人は、今まで出会ったどの男の人とも全く違う。
何て綺麗な人……。
だけど何だか冷たい色の瞳が少し怖かった。
「それで話は済んだのか? 一樹」
「いえ、今その話をしていたところです」
「そうか」
『一樹』と呼ばれた人は英さんより明らかに年も上なのに彼の後ろに下がって敬語を使っている。
ふいに英さんはヘイゼルの瞳をこちらに向けた。
「それで、お前はどうしたい? 俺の所に来るのか?」
「そんな、急すぎて……」
いきなりこっちに話を振られた私は困り果てていた。
いきなり現れていきなり家に来いだなんて常識では考えられない。
それにこの人達の正体すら不明なのだ。
第一なぜ私を引き取るのか。
何か目的かあるのだろうか。