想-white&black- @-2
「おじさま、おばさま方。私は誰の家でもお世話になる気はありません。一人で生きていけます」
親戚達は一瞬驚いたようにポカンとしていたが、すぐに皆一様に引き止め始めた。
「そんな女の子が1人でなんて……、なあ?」
「そ……、そうよ。無理してそんなこと…」
そう口にはしているがその表情は心なしか安堵の色が見える。
だが彼らの心が体裁やら世間体を前に許せないのだろう。
その表情に一気に心がまた沈んでいく。
どうせ世間体を気にしているだけのくせに。
陰で色々あることないことを言っていたことも知っている。
そういう彼らの姿を見た瞬間、身体中の熱が爆発したような怒りが湧き上がった。
「結構です。あなた達のお世話になんかならないわ! 心にもないこと言わないで!!」
「まっ、何て口の聞き方を……」
「全く……、親も親なら娘も娘だな!! 親戚中の恥さらしの娘が」
私のことだけならまだしも死んでしまったパパやママの悪口まで言うなんて……!!
更に身体中の血液が沸騰しそうだった。
皆冷ややかな目付きで一斉に私を見ている。
「何にも知らないくせに……。パパやママの悪口を言わないでよっ!!」
こんな最低な人達の前で泣くつもりなどなかったのに、涙が溢れて頬をぬらしていく。
今まで流せなかった涙が一気に出てきたようだった。
両親を罵る言葉を吐いた叔父に向かって思わず右腕を振り上げた瞬間、私の右腕は何かによって止められていた。
「おやめなさい、間宮花音さん」
私の振り上げた右腕を誰かが掴んで止めた。
後ろから男の人の声がして驚いて振り向くと、年は二十代くらいの黒いスーツを着た男の人。
背が高く、きちっとした身だしなみに整った顔立ちから伝わる雰囲気は明らかに周りとは一線を画していた。
「あ、あの……腕、離してください」
私は掴まれた腕を離してもらうために声をかけた。
「失礼いたしました。向こうから拝見しておりましたがあまりにも目に余りましたので」
その男の人は私の腕を離すと親戚達へと視線を移す。
その目は冷ややかでその場にいた私達は思わず息を呑む。
だが当の本人は気にする風でもなく、次の瞬間口にした言葉に私は絶句した。
「早速でぶしつけで申し訳ないのですが、花音さんをこちらで引き取らせていただきませんか?」
「………ええっ!?」
いきなり耳を疑うようなその男のセリフに私や親戚中は固まってしまう。