Lesson xxx 1-1
授業終了を告げるチャイムが鳴る。
やれやれ。
これで今日も終わり。
進学校に入学したまではよかったけど、その後はさっぱり授業に付いていけず成績は低空飛行の墜落寸前。
この前の定期テストも全くだめで、これは留年かもなぁと密かに内心でため息をつく。
留年女と呼ばれるぐらいなら学校なんていっそ辞めてしまおうかって考えてる。
いつの間にかホームルームが終わったようで、みんながガタガタと席を立つ音で現実に引き戻された。
私も帰ろうとカバンを手に立ち上がる。
「神崎。ちょっと」
担任の榊先生に呼び止められた。
無言で顔を向ける私を手招きする。
数人しか残っていないガランとした教室。
教卓と私を遮る障害物は何もない。
私は真っ直ぐ榊先生の元へと歩いた。
「何ですか?」
顔も声も無愛想な私に先生は軽く息を吐いた。
「何ですかじゃないだろ。お前、このままだと留年だってわかってんだろな?」
残ってる生徒を気にしてか小声で告げた。
「それは…まぁ…」
「まぁ、じゃねーだろよ」
「もういいですよ。留年したら学校辞めるし」
「もうちょっと頑張ろうとかって考えはない訳?」
私の返事に呆れたような顔で説教する先生がウザかった。
「頑張ってどうにかなるもんでもないでしょ?それとも留年しない方法でもあるの?」
敬語さえ使わなくなった私に先生の眉間に皺が寄った。
「だからそれを頑張る気があるのかって聞いてんだよ」
「それって?」
「留年しない方法」
先生の唇がゆっくりと動いた。
「そんなのあるの?」
「だからお前次第だって」
賑やかに挨拶をして帰っていく生徒に先生は笑顔で手を振りながら応えている。
「………どうすればいいの?」
「補習を受けてもらう」
「補習…?」
「数学、理科、英語の三教科」
一本一本指を立てて私に見せる。
「さっ、三教科…!?」
成績が落ちて以来まともに勉強していないのに、いきなり三教科の補習はキツい。
思わず声が裏返ってしまったのを聞いた先生はニヤリと笑った。