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パシリ的主張
【青春 恋愛小説】

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パシリ的主張-2

文化祭3日前。授業がつぶれてラッキーだけど、やたらはりきる奴がでたりしてめんどくさい。
「今日は文化祭の『滝中生の主張』のクラス代表を決めたいと思います」
いっきに教室ががやがやしだして、実行委員がさらに声を張り上げる。
「誰かやりたい人いませんかー?」
途端に静まり返る。みんな楽しみにしてはいるが、代表にはなりたくないのが本音だ。
ふざけて小早川とお互いの手をあげたりさげたりしたけど、もちろんやる気なんてさらさらない。
しばらくしても誰からも挙手はなかったので、わかってましたと言わんばかりに実行委員がくじをだした。
「一人ひとつ引いてください。○がついていた人が代表です」
悲鳴と安堵の声が教室に響きわたる。心の中にぎりぎり止めつつ一枚手に取った。
真っ白な紙―。ふぅーと長めの息を吐く。
「○がついていた人は手をあげてください」
すっとあがった手に、浜崎の顔色がちょっと変わった。○を引いたのが森屋ユミだったからだ。
「では、代表は森屋さんにお願いします」
パラパラと拍手がおこった。こういうのはお調子者キャラが合ってるだけに、みんな複雑だった。
結局、微妙な雰囲気のまま代表選考会は終了した。

文化祭当日。とは言っても華やかな行事では華やかな奴しか忙しくない。
オレの役はいつも通り教室のすみでプロレスをすることだ。
案の定、女子の実行委員に注意され、しぶしぶイスを引きずって体育館に移動する。
体育館の中はすでにハイテンションな生徒たちのせいでヒートアップしていた。
「静かにしてください」
開始まであと30分もあるのにまず無理な話だっつーの。
「宮田、ちょっと」
一緒にバカ騒ぎに加わっている途中、深刻な顔で浜崎に耳打ちされた。
体育館の裏にまわって砂利の上にしゃがむ。
「あのさー、主張やんね?」
「は?やだよ。なんでだよ。だって…」
続く禁句は言えるわけなかった。
「さっき…泣いてたんだよ、森屋。平気な顔してたくせに」
そう言う浜崎の顔がすでに泣きそうだった。
「…。なんでオレが」
「オレ!どうしてもほっとけなくて、宮田が野島に告りたいって言ってた、って言っちゃったんだ」
「…んだよそれ。自分でやればいいだろーが!」
「頼むよ、宮田、マジで。野島が彼女だったらって言ってたじゃん」
「ふざけんな!てめーも言ってたろーがよ!」
「宮田!」
浜崎を無視して、体育館に戻った。
なんでオレが浜崎の好きなやつのためにやんなきゃねーんだよ。てめぇでやれよ。
怒りのあまり間違えて、ステージ袖の入り口から入ってしまった。
「主張の人ですか?」
実行委員にみつかって足早に立ち去ろうと思った瞬間、列にならぶ森屋をみつけた。
目が…赤い気がする。
「関係ない人は席についてください」
そうだよ、オレ関係ないじゃん!そうそう、浜崎も森屋も関係ない!
そのとき、森屋が振り向いた。一瞬オレにびっくりしてすぐに顔を引き締めて前を向いた。
平気そうな顔じゃん―。
「関係ない人は…」
「関係あんだよ!」
気づいたら席じゃなく森屋のところに走っていた。
「森屋、席戻れ」
「でも…」
森屋の顔がみるみると泣きそうな顔になっていく。
「席戻らないならここにいろよ」
あーもう何言ってんだよオレは。マジでやりたくないのにバカか、ほんとに。
あの森屋の顔は反則だ。平気そうな顔―。パシリと呼ばれるたびにオレもよくやってる。
カッコよくフラれて、カッコ悪く泣き叫んで笑いをとる。これがオレの役なんだ。
ゆっくりと歩いてステージの真ん中に立つ。ちらっと横を向いたら、泣きじゃくる森屋がいた。
森屋、泣くなよ。ちゃんと見てろよ。たぶん以外にいい顔してるぜ?

深く息を吸い、一気に吐き出した。
「野島詩織さん!オレとつきあってください!」
体育館が大きく揺れて、宙を舞った。


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