ネコ系女 #3-4
「で、何しにきたの?」
自分でも驚く程冷たい声だった。
お客様にこんな態度を取るのは販売員失格だけど、どうせタマは客じゃない。
「ケーキ、買い来た」
ケーキ屋さんだからね〜。とタマは笑う。
「俺、九時から店の前で待ってたんだけど、ここ十時からだったんだぁ。一時間も待ってたよ〜」
相変わらず口は閉じることはなく、ショーケース内のケーキを眺めている。
「ノエルも一緒なんだ。ほら」
タマは顔を上げて外を指差す。そこにはどうやらリードで繋がれた小動物らしきもの。
姫代は嬉しそうに駆け寄って窓越しに構っている。
ていうか名前、ノエルに決定なんだ。
「フルーツタルトとシュークリーム一個ずつください」
「…かしこまりました」
私はわざとらしくため息を吐くと、熱湯に浸けてあるトングを持った。
軽く水気を拭いて、ケーキを崩さないよう掴むと、丁度良い大きさの箱に入れていく。
掛け紙をして光沢のある細いリボンで結ぶ。
小さい袋に入れて、タマに差し出した。
「五二〇円」
「はーい。はい、丁度!」
「どうも」
レジスタに値段を打ち込んで、お金をしまう。
「お帰りはあちらでございます。ありがとうございました」
【ネコ系女は投げやり】
「あっはい、どーも。…はっ、ぇあ、あの、ケーキ屋さんに言わなきゃいけないことあるんだ!」
タマは私の言葉に誘導され自動ドアに向かって歩いていったが、ハッとして振り向き、また私の所に戻ってきた。
ほう。
やっぱり。ケーキを買いに来た訳じゃないことぐらい分かってた。そんなものは建前だ。
【ネコ系女は疑り深い】
言わなきゃいけないことって何だっつーのよ。
「何?」
「あのさ…」
タマは言い掛けて、口ごもる。とても言いづらいことのようだ。
「あの、その…」
何?早くしてよ。タラタラするのは好きじゃない。
【ネコ系女はセッカチ】