遠恋ーえんれんー-8
「だから何なの‥「美音はまだそいつのこと好きなの?」
あたしの言葉に被さってきた蓮の言葉。
「君」じゃなくて「美音」って名前で呼んだってことは、蓮が真剣になってる証拠。
一体何に真剣になってるのかさっぱりわからない。
「そいつって泪のこと?」
「あぁ。他にいないだろう。」
いきなり「そいつ」呼ばわりするから気付かなかったじゃないの。
なんで突然泪に敵意を向けてるのか理解できない。
「‥好きだよ。」
蓮の真剣な視線を受け止めつつ、小さな声で、だけどしっかり言う。
「‥そか。」
蓮は小さく返事をすると、これまた小さく笑って歩き始めた。
なんなのよ!?
って問いただしたかったけど、無理だった。
笑ってるけど、蓮が酷く傷付いてるのがわかったから。
原因がわからないあたしはどうしたらいいのかもわからない。
「‥蓮。」
「‥んー?」
蓮がこっちを見ないで言葉だけを返す。
「あったかい紅茶でも飲みに行きましょうか‥なんて言ってみたりして‥」
あたしのその言葉にやっとこっちを見た。
あまりにじっと見るので言葉の最後の方はモゴモゴと口の中で呟くだけになってしまった。
「‥うん。行く。絶対行く。」
本当の笑顔がどんなもんか知らないけど、こう言って笑った蓮の顔は、あたし的には最高の笑顔だったんじゃないかと思う。
そう蓮に伝えると、
「僕の本当の笑顔は太陽光レベルですから。直視できないよ?」
と、軽くあしらわれてしまった。
行き先を駅からカフェへ変更し、二人で笑いながら歩き始めた。