遠恋ーえんれんー-5
「そんなんじゃない。」
うどんを受け取りさっさと席に戻る。
もちろん食堂のおばちゃんを軽く目で睨みつけてから。
「じゃあ何故わからないんだ。君は矛盾しているぞ。」
あたしがうどんを食べ始めても蓮の質問は続く。
「しつこいなぁ‥。連絡とりあってないからわからないの。以上。他に質問はございますか?」
「あぁ、たくさんある。」
本当にしつこい。
「ねぇ。ナルトあげるから静かにしてもらっていい?」
「君は馬鹿か。僕がナルト一つに釣られる男だと思ったのか。遠慮なくいただこう。」
ヒョイッとあたしの器からナルトを取り、パクッと食べた。
「あぁー!あたしのナルト!」
「なんだよ。君がくれると言ったんだぞ。」
「言ってない!返せ!あたしのナルト返せ!」
「あの‥仲良くご飯食べようよ‥ね?」
やばい。
忘れてた。
本当にやばい。
茜ごめん。
いざこざしてる間に茜は自分の分のパスタを取りに行ったらしくカルボナーラの皿を両手にしっかり持って立っていた。
途端にバツが悪くなるあたしと蓮。
「「ごめんなさい‥。」」
あたしと蓮が素直に謝る。
「わかればよろしい。」
と、ニコッと満面の笑みを浮かべて蓮の横に座る茜。
あたしも蓮も茜には勝てないのだ。
大人しくうどんでも食べるか。
「‥?」
視線を感じると蓮がこっちをジッと見ながらうどんを啜っている。
「‥気持ち悪っ!なんだよ!?」
「いや、別に。」
いや、別に。じゃないだろ!
明らかにこっち見てうどんを咀嚼していたではないか!
騙されないぞ!
「‥ぬう‥。あっそう。」
茜がこっちを不思議そうな顔で見ている。
今突っ込むと面倒なことになる。
仕方なくあたしは折れた。
畜生!なんなんだよ!
結局。
あの後、蓮に凝視されながらうどんを食べるという地獄の15分間を味わい、今に至る。