遠恋ーえんれんー-4
「ホントにごめん。けどもう大丈夫だから。ね?」
そう言ってちゃんと起き上がり、にっこり笑って見せた。
口はなるべく開かない。
酒臭い息がもれるから。
しかしそんな努力も虚しく、
「酒くさっ‥!まるで人間の奈良漬けだな‥」
「あ゛ぁ!?」
「蓮!」
反応の違いはあれどあたしと茜は同時に後ろを振り返った。
柿田蓮。
茜の彼氏だ。
あたしと茜の後ろに仁王立ちしている。
「凄まじいくらいの酒臭さですね。尊敬します。」
「嫌味なら後にして。今最高に気分悪いの。」
それは失礼、と蓮はあたし達の向かいに座った。
奴はあたしとは違うタイプの口の悪さだ。
なんとゆうか‥頭が良い故に嫌味に聞こえる。
まぁ仲は良いけど。
「蓮、ご飯食べた?茜はこれからなんだけど一緒にどうかなっ?えと、荷物こっちに置く?」
可愛いな茜。
いつもよりキラキラして女の子らしくなって。
自分のこと茜なんて呼んで。
普段は「私」なのに。
けれど全然嫌な感じがしない。
恋する乙女って可愛いよ、本当。
あたしも見習いたい。
「ありがと茜。僕もこれからご飯だから一緒に食べようかな。‥ところで奈良漬け。」
「美音ですけど。」
「そうそう美音君。最近彼氏は元気してる?」
「彼氏って泪のこと?知らない。」
「知らないって、彼氏だろうが。」
「知らないもんは知らないの。あたしうどん食べようかな。」
逃げるように席を立ち、カウンターに向かう。
「うどん一つ」と不機嫌にオーダーする。
「僕もうどんにしよう。話を戻すが、君達はうまく行ってないのか?」
蓮もカウンターまで追いかけてくる。
食堂のおばちゃんも興味津々な目でこっちを見ている。
クソ蓮の奴‥こんな公共の場でしつこく聞いてきやがって‥