遠恋ーえんれんー-3
「嫌な夢だな‥
あー‥もう支度しなきゃ間に合わねぇ」
老体(21歳です☆)に鞭打ってなんとか起き上がる。
あれ。
世界ってこんなに歪んでたっけ。
あたしが斜めってんの?
あれ。
まぁいいや。
不自然な歩き方をしながらノロノロと支度を始める。
腰までの赤茶色の髪に軽くかけたウェーブ。
周りからは寝癖だと思われてるらしい。
まぁ半分当たってるから何も言えんがな。
櫛を使うのが面倒なので手櫛でとかす。
けどメイクはしっかりする。
あたしの取り柄は顔だけしかないから。
黙ってれば可愛いのに‥なんて聞き慣れた台詞。
まぁ、すっぴんは薄過ぎて見れたものじゃないけど。
ただ一人、泪だけがあたしのすっぴんを知ってる。
大笑いしてたけど。
それでも何故か嫌じゃなかった。
むしろ嬉しかった。
「私変なの」
本当に変。
変もいいとこだ。
すっぴん見られて笑われて嬉しいなんて。
変態か。
「眉毛ねぇー!つうか目小さっ!‥‥ぎゃあぁあぁ!!!!!痛いっ!痛いっ!殴らないで!足の小指踏まないで!‥‥怒んないでよ。はいはい。可愛い可愛い。」
そう言って散々笑った後、ふてくされたあたしの頭をくしゃくしゃに撫で回す。
あたしに優しく触れる泪の綺麗な手が大好きだった。
‥だった?
過去形になるなんて。
泪と離ればなれになって4年目になるからかな。
こうやってどんどん全てが過去形になっていくのかな。
「‥よし。」
パチンと両方の頬を叩き、気合いをいれて立ち上がる。
あんな夢くらいで凹んでる暇はないのだ。
さぁ授業。
足取り重く大学へ向かった。
「美音昨日大丈夫だった?かなり酔い潰れてたけど‥」
「あぁー‥うん。ヘーキ。心配かけてすまん。」
「平気なら良いけど‥」
まだ心配そうにあたしを見つめる茜。
そりゃそうか。
昨日のあたしの酔いっぷりは最悪だったからな。
今もこうして食堂のテーブルに突っ伏している。
本当に申し訳ないことをした。