Plunged-8
1週間後、田沼は学園を去った。あの騒動の翌夕、新聞部は速報を貼り出した。
──夜のチン騒動?─
という見出しを付け、淫部と目を黒塗りした田沼の写真を添えて。
むろん、この程度では懲戒処分となり得ない。麗香は学園長のところに赴き、盗撮した映像を提出して事の顛末すべてを語ったのだ。
もちろん、由香が映っている部分は編集で分からなくしてから。
田沼が居なくなった放課後。
麗香は屋上のベンチに腰掛け、学園前の田園を眺めていた。
一面、朱色に染められたヒナゲシの真ん中を、濃い青葉が貫くコントラストが夕日に彩られて鮮やかだ。
「部長ォーーッ!」
カン高い声とともに現れたのは由香だ。
「何やってるんです?もうすぐ部活が始まりますよ」
「分かってる…」
麗香は柔らかな表情で由香を見た。
「とりあえず、カタがついて良かったわね」
「はいッ!友達もとても喜んでました。部長のおかげです」
由香は声を弾ませ、深く頭を下げた。その様子に麗香は頷くとニヤリと笑い、
「私なんかより、1番の功労者は由香よ」
「私が?…ですか」
「そうよッ。なんといっても田沼に弄ばれてヒイヒイよがって。とっても愉しそうだったけど」
「じ、冗談じゃないですよッ!あんな目、2度とゴメンです!」
涙目になって本気で怒る由香を見た、麗香はケラケラと笑った。
朝霧麗香。聖信学園中等部3年、新聞部々長。
今日もまた、学園の正義を貫くため奔走する…。
…『Plunged』完…