未完成恋愛シンドローム - 希望的観測 --12
―もしかして。
昨日オレが禁欲宣言したからか・・?
「だったら別に中使ってえーでって」
―ん?
「じゃあ、なんでこいつ地べたで寝てるん?」
コタローの存在に気付いた時から抱いていた疑問を口にする。
「もう一つのベッドで寝てもいいって言ってんけど」
煙を吐き出しながら言う瞳姉。
「そこまでしたくないって」
「なにそれ」
軽く呆れる。
「だったらせめて椅子に座って寝ればって言っても、落ちるから嫌やって言うし」
「・・・」
軽くではなく、本気で呆れた。
―まぁ、確かにコタローは寝相悪いけど・・。
「ってこと」
「・・なるほど」
―キーンコーンカーンコーン。
「あ」
「お」
チャイムが鳴った。
いつもならこれから4限が始まる訳だけど、今日はこれで終わり。
大体終礼も終わった頃だろう。
「さて。あたしは職員室行くけど、あんた方どうすんの?」
自前の灰皿で煙草を消しつつ、瞳姉が聞いてくる。
「取り敢えず、こいつが起きてから帰る」
無理矢理起こしてもまず起きないし、それが一番無難だろう。
「判った。ほんなら、起きたら行く前に職員室に顔出して」
煙草の空き箱を潰しながら、瞳姉が言う。
―ああ、煙草無くなったんね。
保健室を出て行く瞳姉の背中を見送りながら、なんとなくそう思った。
「・・・」
ベッドから降り、コタローの前にしゃがむ。
「ほんまに寝てんの?」
「ん・・」
声をかけると、コタローがうっすらと瞼を開ける。
「・・おはよ」
「やっぱし」
ワザとらしく挨拶をしてくるコタローに、冷ややかな目つきで返してやる。
「勘違いせんといてや」
「なにを?」
意味が判らん。
「起きてから5分も経ってへん」
・・・。
「まぁ別にいーけど」
特に聞かれて困ることをしゃべってた訳でもないし。
「つか」
「ん?」
それよりも気になることがあった。
「昨日何時まで起きてたん?」
「3時、かな」
・・・・。
「それって、英語勉強してたから?」
「さあ?」
あくびをしながら答えるコタロー。
「貧血やって」
「らしいな」
「オレのこと運んで来たん、あんたみたいやん」
「一応な」
まだ寝足りないのか、瞼を擦るコタロー。
一瞬、瞳姉の言葉が頭によぎる。