アントランスミッション-1
真夏の、けれど珍しく涼しい風の吹いたある日
“わたし”は“彼女”に告白した
中学校からずっと一緒のクラスで、いつも隣にいた
何をするにも二人で
そのときはまだ、親友という認識でしかなかった
同じ高校に入学してすこし経った春の日
同じクラスの男の子から告白された
わたしは、そういうときにどうすればいいのかわからなかった
だって、わたしは相手のこと、面白い友達くらいにしか思っていなかったんだから
だけど、泣きそうな目で見つめてくる彼
それを『好きでもなんでもない』って断るのは気が引けた
だから、とっさに嘘をついた
─わたし、今、付き合ってるの─
そんなわけはなかった
けど、彼は真に受けて、でも...
─誰と─
そんなことを訊いてきた
だから、嘘だってば……なんて言えない
わたしは、無言のまま逃げ出してしまった
─誰と─
誰とだろう
誰となら、わたしは付き合えるの
わからなかった
男の子とはよく話すけれど、友達以上の関係とかにはならないし
そうして思考を巡らせていると、不意に彼女のカオが浮かんだ
……え
ずっと隣にいた彼女
落ち着きのないわたしを構ってくれたり
落ち込んでるときに励ましてくれたり
でも、うそ...
なんで、彼女のやわらかい笑顔が浮かぶの
親友だから、ではないと思った
その日、お風呂に浸かりながら考えた
わたしが付き合いたいと思ったのは、本当に彼女なのか
けど、そういうの、ありえない
だって、わたしも彼女も女の子なんだもの
わたしは、その先の答えをみるのが怖くて
それから、考えることをやめた