アントランスミッション-4
─びちゃびちゃ─
わたしは、いてもたってもいられずにトイレを飛び出した
むせび泣きながら嘔吐を続ける彼女の嗚咽を背に受けながら...
高校を中退して、けど学業に未練があって
そんな話はよく聞くもので
わたしもそんな一人で
わたしはこの春、なんとか地元の短大に入った
大学は私服が許されているから、年中を長袖で過ごせる
あんな過ちは、二度と繰り返さないでいい
それから、わたしは彼女のことを忘れた
おかげで、高校での出来事はきれいさっぱりだ
それでもたまに、そのときの夢を見たりする
けれど、朝起きると内容を完全に忘れてしまっているので、いずれは夢も見なくなるかもしれない
高校でなにがあったのか、わたしはまったく覚えていない
今は、短大の同級生と付き合っている
彼は優しくて成績も優秀で、勉強なども教えてくれる
休日は一緒にデートしたり、彼の家にお泊まりさせてもらったり、経験したことのないラブラブな日々を過ごしている
そんな日々に、まれに、なぜか手首が痛むときがある
なんでこんな傷痕がついたのかはわからないけど、大学では長袖の服で隠すようにしている
けど彼に対しては違った
彼は、そのことについてなにも訊かずにいてくれるのだ
そんな思いやりが、とても嬉しくて
けれど、それでもたまにキズが痛む
なんでだろうか
彼に近付いてゆくごとに、痛みは増してゆく
この傷痕は消えないだろうから、しかたのないことなのかもしれないけれど
その答えは、忘れ去った高校時代にあるのかもしれない