エリザベス・悲劇の人形たちU-3
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キッチンでグロリアスとマルセルの会話が始まった。
のんびりとコーヒーを飲むマルセル。
病院での検査も済んで、ホッと一息している。
一ヶ月後の検査結果を待つだけなのだ。
3年前に受けた肺ガンの摘出手術。
腫瘍を摘出して手術は成功していた。
ところが最近になって、胸の辺りから痛みだしていた。
検査を受けたところ、別の箇所に転移している可能性が濃厚となった。
果たして、正式な結果はどうでるかである。
場合によっては、長期入院も有り得るだろう。
グロリアスの方は、マルセルが管理している銀行通帳3冊、家計簿、各種支払書を見ていた。
その表情、穏やかではないようだ。
マルセルの前に、それらをドンと置いた。
「グロリアス?」
「…」
厳しい表情で姉を見つめるグロリアス。
「どうしたの?」
「これはいったい、どう言う事?」
「何が?」
「この家の遺産を、私が知らない間に半分以上も使っているじゃない」
「そうね」
「そうねって、姉さん何ィ考えてんの?」
「何ィ…って?」
「お金、何に使った?」
「それは勿論…」
「エリザベスに殆ど注ぎ込んだ。そうよね?」
「まあ、そうね」
マルセルとグロリアスは既に両親も亡くなって、たった2人だけになっていた。
グロリアスはその後、隣街で自ら事業を起こし、マルセルは父親のアースルが経営していた銀行や不動産会社の経営権を引き継いだ。
グロリアスが姉の金の使いっぷりを指摘する。
「死んだ父母の遺産や家の貯金は全て、姉さんが管理しているよね?」
「ええ」
「遺産相続は姉さんの方に譲られたから、お金は自由に使える」
「自由に使えるって事じゃないけど」
「でも実際、そうでしょう? だから、そのお金で、あの図体の大きい能無し人形を贅沢させる事が出来る」
半分、イヤミである。